今年観た舞台で印象に残ったもの
ベスト10を決めるほどたくさん観ていないので、特に印象に残った舞台を3つだけ、観劇順に。

まずは、3月に観た「身毒丸 復活」。観る前にはそれほど好みのタイプの芝居だと思っていなかったのに、舞台が始まったとたん、そのレトロでいかがわしい雰囲気に引き込まれた。これはもう、ただスゴかったと言うしかない。芝居というものの見世物の部分を存分に活かした、祝祭的な舞台。観ることができて、本当によかった。

それから、5月の「わが魂は輝く水なり-源平北越流誌-」。これはもう観る前から期待していたとおりの、あるいはそれ以上の出来栄え。野村萬斎さんの老武将役も尾上菊之助さんの演じるその息子も、凛々しく、同時に人間くさく、冒頭の森からラストの水音が聞こえる場面まで、様々なイメージと思いが生々しく、そして同時に美しく描かれていた。観た後に、人というものに絶望しない強さを与えてもらったような気がした。

そして、6月の「俺を縛れ!」。昨年から気になって観続けていた柿喰う客に、とうとうやられてしまった。いやぁ、なんて言ったらいいんだろう?とにかくスゴかった!堂々とした時代劇ぶりも、ありえない設定も、ふざけてるのかと思ってしまいそうなラストも、それらをまとめる全体の構成も、そして何より、舞台上を駆け抜けた若い役者さんたちの熱気も。観るたびにますます魅了された、圧倒的な舞台。

で、個人的に今年の主演男優賞を選ぶとしたら、「身毒丸」の藤原竜也さんでもなく、「わが魂~」の萬斎さんでもなく、「俺を縛れ!」の堀越涼さんということになる。キャラクターの振り幅もけれんみも素晴らしく、不思議な吸引力があった。

主演女優賞は、しゅうくりー夢の今年の2回の公演でどちらもヒロインを演じた松田環さん。作・演出そして主演までも彼女が務めた作品は、どちらも同世代の女性として本当に共感してしまう。特に8月の「Father Christmas,Don't Cry~2008下北Ver.~」は、何度観ても泣けてしまった。

演出はといえば、これはもう蜷川幸雄さんのお名前を挙げないわけにないかないだろう。上で挙げた「身毒丸」や「わが魂~」の他、「リア王」の平幹二朗さんの迫力や「ガラスの仮面」のヒロインたちの初々しい情熱など、今年観たどの作品も印象的で、パワーを感じさせられた。

特筆すべきは、柿喰う客という若い劇団の勢いだ。昨年の後半から観始めたのだが、その多彩な活動やメンバーおよび客演陣の幅広い活躍に驚いた。そして数十人でもたった一人でも、独自の世界観に客席を巻き込んでしまうその説得力はいったいどこから来るのか、それが知りたくてまた観に行ってしまうだろう。

伝統芸能も見応えがあった。「屋島」の中で奈須野与市を演じた萬斎さんの気迫。歌舞伎の「高野聖」での玉三郎さまの妖しくもたおやかな立ち居振る舞い。二十一世紀歌舞伎組のチームワーク。能でも狂言でも歌舞伎でも、高い完成度とともに時代に対応しようとする新しい工夫が様々な形で見られたことは、自分にとって大きな収穫だった。

大人数の賑やかなものも多かったが、一人舞台や二人舞台などの少人数の作品の緊張感も堪能した。中でもキャストが4人のみの「proof」という芝居を、2つのまったく異なるキャストで観たことは印象的だった。どちらも、完成度の高い脚本を緊張感を持って演じたいい舞台だったが、芝居というのは演出や役者によってこれほどイメージが変わるものなのだということを改めて思い知らされた。

ここに書いた他にも、大好きな作品や楽しませてくれた芝居がたくさんあった。いくつもの新しい出会い。さまざまな笑いや涙。いつまでこんなふうに芝居を観続けることができるのかわからないけれど、こうしてもらったたくさんの思い出は、大切な宝物となるだろう。
[PR]
by kiki_002 | 2008-12-31 21:28 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://kiki002.exblog.jp/tb/10029592
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
だって、好きなんだもん!
by kiki
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
ブログパーツ
検索