「町長選挙」
著者:奥田英朗
出版社: 文芸春秋社(文春文庫)
発売日: 2009/03/10

トンデモ精神科医 伊良部先生シリーズの第3弾が文庫になったので、さっそく買ってきた。前の2冊もとても面白かったので、当然即決。

読んでいるうちに、このシリーズの主人公は伊良部先生というより、各回ごとに変わる患者なのだろうという気がしてきた。毎回毎回、よくもまぁこんなにと思うくらい、いろいろな人物がおかしくなっていく様子は、なんだか身につまされる。

人間ってさぁ、いろんなこだわりや見栄や屈折や思い込みや、そんなものたちでがんじがらめ。どの話も、おかしくなっていくそれぞれの主人公の目線で見てるから、ふと我にかえると自分は大丈夫かと思わず心配になってくる。しかも、それに輪をかけて妙なのは、もちろんお馴染みの伊良部先生だ。

それにしても、こんな医者のところによく毎度毎度患者が来ちゃうよねぇ?大きくて立派な総合病院の精神科だから、まさかこんな先生だとは思いもしないんだろうけど。それにしても、ホントにこのドクターを見てると呆気にとられる。

でも……。だからこそなのかもしれないけど、どの患者もこの先生のところに通ううちに、しだいに自分を取り戻していくのだ。

4つの短編が収められている中で最初の2作の主人公は、プロ野球チームのワンマンオーナーだったりマスコミをにぎわすIT企業の若き経営者だったり。あ~、そういえばあの人……という感じで、明らかなモデルがいるものの、そんなことよりも、あいかわらずの突拍子もない病状とそこから主人公たちが何かに気づいていく様子がなんとも面白い。

そして、セクシーで無愛想な看護婦まゆみの活躍が以前より増えてる気がするのが楽しい。

表題作の「町長選挙」では、伊良部先生とまゆみが小さな島へ赴任して、これまでとは舞台も変わってくるのが、ちょっと新鮮。文庫版の帯には『伊良部だって、ひきこもる』とあるけれど、これまでの様子を見てると、「出たくないも~~ん」とか言って閉じこもるのはどちらかというと伊良部らしい気もする。

とりあえず気軽に手にとって、笑ったり呆れたりしながら、読み終わるとなんとなくスッキリしているってのは、これまでのシリーズと同様。いやホント、面白いから。
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by kiki_002 | 2009-03-17 23:53 | | Trackback | Comments(0)
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