『秋期限定栗きんとん事件』〈上〉〈下〉
著者:米澤穂信
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
発売日: 2009/2/27、2009/3/13

この本のタイトルを見て面白そうだと思った方とは、きっと気が合うだろう。一見してミステリーだけれど、ハードボイルドや社会派ではなさそうなタイトル。もっといえば、あまり深刻な事件というより、市井の生活に潜むささやかな謎を扱った物語ではないかと想像させるタイトルだからだ。

実はこの本の前に、「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」という2冊が、同じ主人公のシリーズとして出版されている。

どれも、小市民を目指す小鳩くんと小佐内さんの2人を中心に物語が進む。

なぜ彼らは小市民を目指すのか。以前は、謎を解き名探偵として活躍をすることを楽しんでいた小鳩くんだったけれど、そういうことをしていくことで、周囲を傷つけたり、周囲から疎まれたりすることに気づいてしまったから。平穏に、そして人に疎まれずに生きて行くため、輝く小市民の星をつかもうとしているのだった。

小佐内さんも似たような状況だったけれど、彼女が封印したのは謎解きではなく復讐だったというから、この小柄な可愛らしい女の子もなかなか一筋縄では行かない。

で、恋愛関係でもなく、依存関係でもなく、ただ小市民という目的に近づくために、協力し合っていた2人だったけれど、その関係に行き詰って、別れることになったのは、前作の「夏季限定トロピカルパフェ事件」でのこと。

こんどの作品では、小鳩くんにも小佐内さんにもそれぞれ彼女や彼氏ができ、当たり前の高校生活を謳歌し始めるところから物語が始まる。しかし、町に起こった連続放火事件が、2人をまた互いに向き合せることのなるのだった……。

でも今回は、なんていっても堂島健吾だろう。小鳩くんと小佐内さんの共通の友人なのだけれど、この無骨で無愛想な、そして律儀で男気に溢れた健吾が、これまで以上にいい感じなのだ。

いやいや、思い返してみればこれまでも、充分印象的な活躍をしているのだけれど、特に小鳩くんとの奇妙な友情が、なんともいえず楽しい。お互いにタイプも信条も違い、けっして仲良しとは言えないのに、それでもお互い相手に一目置き、いざというときに頼ることになるのだ。

甘々な学園ミステリーではなく、とても自意識の発達した生意気な高校生の、その微妙な心意気がけっこう好きだったりする、そんな物語。上下巻2冊あっても、すぐに読めるので、ぜひ手に取ってみてもらいたい。
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by kiki_002 | 2009-04-06 23:46 | | Trackback | Comments(0)
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