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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

もう2度と……

栗本薫さんが亡くなった。

その知らせを聞いて、自分自身でも思いがけないくらいショックを受けた。

……まず最初に思い浮かんだのは、やはりグイン・サーガのこと。それでは、あの長い長い物語がこれからどうなっていくのか、もう決して知ることはできないのだろうか。

イシュトの求婚を受けたリンダには、これからどうするのか。ヤガへ向かったヨナはどんな光景を目にするんだろう。まだ幼いスーティが父に逢う日が来るのだろうか。いつの日かグインの記憶は戻るのだろうか、そして最終刊で描かれる豹頭王の花嫁は?

たくさんの謎がまだそのままになっているのに。数多くの人々の運命が、その続きを語られるのを待っているのに。

彼女の死によって、ひとつの世界が時間を停めてしまったのだ。

そう、あれはすでにひとつの世界だった。主人公や主要な人物だけでも本当にたくさんの名前を挙げることができる。そしてそのほかにも、たとえばトーラスのゴタロ一家などを思い出すと、まるで古い知人のことを考えるように懐かしいのだ。

下町で居酒屋を営むゴタロ、戦争によって長男を失い、自らも目が不自由になるが、働き者で気のいい奥さんと片足が不自由ながらしっかりものの次男とかわいらしい嫁に囲まれ、平凡な人生をおくっている。

しかし、ときには運命のいたずらにより、ケイロニア王であるグインや、パロの王子マリウス、ゴーラの宰相カメロンなどがこの平凡な家族と出逢ったりもするのだ。

数え切れないほどの多くの人々、さまざまな街や村や砂漠、いくつもの国や地方。その世界がそっくり、彼女の死によって凍結されてしまった。

グイン・サーガだけではない。あの優しい目をした伊集院大介や、デビュー作で探偵役を務めた薫くん、推理ものには欠かせない山科さん、たくさんの愛すべきキャラクターたちのその後の消息を訊ねることは、もう2度とできないということなのか。

彼女の作品に最初に出会ったのは、まだ十代の頃だった。長年親しんできた多くの作品が、切れ切れに脳裏をよぎる。

この訃報に際して、今はただひとこと、ありがとうという言葉を。

そして……ご冥福を心からお祈りいたします。
by kiki_002 | 2009-05-27 21:07 |