「沼地のある森を抜けて」
著者:梨木香歩
出版社:新潮社(新潮文庫)
発行:2008年12月1日

梨木香歩さんの作品には、ずいぶんハマった。いまではだいぶ文庫でも読めるようになったし、「西の魔女が死んだ」が映画化されたので、この作家の名前をご存知の方も多いだろう。

彼女の読み始めたのはもう10年近く前、その頃はまだ文庫にはなってなくて、自分としては珍しく、当時発売されていた作品はすべて、ハードカバーで買って読んだものだ。

……といいつつ、この作品は今回文庫になって、初めて読んだ。しばらくぶりに読んだ彼女の小説は、相変わらず不思議な透明感と生命力に満ちていた。


この物語のキーとなるのは「ぬかどこ」。あのぬか漬けをつけるあれだ。主人公の久美が、叔母の死によって、一族の女たちが代々受け継いできたぬかどこを引き継ぐことになったところから、物語は始まる。

長い年月、女たちはそのぬかどこを毎日欠かさず掻き回し、手を入れてきた。しかしそれは、ただのぬかどこではなかった。ある日突然、ぬかどこの中に卵が現れ、その卵から孵ったのは、半分透き通った男の子だった……。

久美や卵から現れた少年、幼なじみのフリオ、そして酵母を研究する風野さん。

女であること・男であること、人間とその他のさまざまな形態の生命、私たちはどこから来て、どこへ帰るのか、そういうさまざまな思いが淡く浮かび行き交いながら、より深い根源へ向かっていく。

久美と風野さんは故郷の森を抜けて、沼にたどり着き、そして……。

この物語と交互に、もうひとつSFめいた不思議な物語が語られ、何の説明もないまま、平行して進んでいく。そのふたつが響き合い、ともにどこかへ向かおうとしているのか。

生命について、そして自分とは。足元を見つめるように、そういうことを思わされる、そういう物語。
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by kiki_002 | 2009-06-04 23:58 | | Trackback | Comments(0)
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