劇団扉座第43回公演「新浄瑠璃 百鬼丸~手塚治虫『どろろ』より~」
平成21年7月11日14:00~、紀伊國屋サザンシアターにて。

作・演出/横内謙介

出演/
どろろ:山中崇史、百鬼丸の影=百鬼丸:累央、百鬼丸の声:高橋麻理
醍醐景光:有馬自由、阿佐比:平栗あつみ、多宝丸:岩本達郎、美濃:中原三千代
白眼童子(梅観):岡森諦
五行上人:杉山良一、上人の使い/村長:鈴木利典
瀬川梶ノ助:犬飼淳治、橘姫:川西佑佳、榎本六郎太:高木トモユキ、真咲道山:安達雄二
女主人:江原由夏、みお:小島喜生
双面/ひげの大将:上原健太、逆手鬼 ほか:栗原奈美、伝令/逆手鬼 ほか:上土井敦、
伝令 ほか:新原武、兵士 ほか:串間保彦、兵士 ほか:藤本貴行、野狐 ほか:鈴木崇乃

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手塚治虫生誕80周年の今、満を持して、決定版として甦る!

 手塚治虫作品の舞台化で話題作を残してきた横内謙介が、2004年初めて劇団公演として手塚作品に取り組み、好評を博した『新浄瑠璃 百鬼丸』待望の再演です。

 少年向けコミックとして描かれた『どろろ』を、歌舞伎義太夫の寵児・竹本葵太夫の協力の下、神話的な語り物=浄瑠璃として再構成したこの作品は、原作とは細部のストーリーが違っていますが、浦沢直樹氏の『PLUTO』の取り組みのように、手塚作品を深く敬愛しつつ、新たな可能性を示した作品として、手塚ファンからも圧倒的な支持を得ました。

 特に、魔物に肉体を奪われて生まれてきた百鬼丸を、二人の黒衣(百鬼丸の声と影)として表現する演出は、精神と肉体の相克をテーマとして追求した手塚治虫の魂を鮮烈に形象化したと評価されました。 
5年ぶりの再演にあたり、名場面はそのままに、新たに改訂を加え、決定版としてお届け致します。
(扉座公式HPより)

       ※       ※       ※

扉座の舞台は、以前から観たいと思っていたのだけれど、今回の演目のタイトルを観て、「よし、今度こそ観に行く!」と即断した。

いや、百鬼丸が好きなんだよね~。カムイと並んで時代物のコミックを代表するヒーローで、重い運命を背負ってなお、前に進もうとするあの健気さに惹かれてしまう。

でも、どうやってあれを舞台で観せるんだろう?

ご存知の方も多いと思うけれど、手塚治虫さんの書いた「どろろ」というマンガのあらすじを簡単に説明するなら、

醍醐景光という侍が、天下を取るという野望のために48匹の魔物に生まれ来る我が子の身体を与えると誓うところから、物語は始まる。

魔物との契約どおり、生まれてきた子どもには48の足りない部分があり、川に流されて捨てられてしまうが、ある人に助けられて成長し、魔物を倒すために旅をしている。体を奪った妖怪を1匹倒すごとに、失った体の部分を1ヵ所取り戻すことができるのだ。

百鬼丸は、こそどろをしている少年どろろと出会い、さまざまな魔物を倒しながら一緒に旅をするのだった。

……という具合なんだけれど、これを舞台でどんなふうに見せるんだろう?しかも新浄瑠璃って?

そして。観始めると、原作とはいろいろと違っていることに気がつく。たとえば、どろろ。子どもではなくて大人の、それも戦で女房子どもを亡くした気の弱い平凡な男。

百鬼丸も若者ではなくて、生まれて17年経っているのに、身体の部位のほとんど、身体を流れる赤い血まで魔物に奪われ、赤ん坊の姿のまま、ただその心の力だけで生きている。

心の声で語り、心の力で名刀 百鬼丸を動かして、魔物を退治していく。どろろと出会い、その助けを借りて旅をする百鬼丸の、まだ幼い子どもの声が語るその言葉のひとつひとつが純粋で無垢な魂そのもの。

魔物を倒す旅を続けながら、人の弱さや愚かさに触れ、それでも希望を持って進んで行く2人。

妻と子を助けられなかった痛みを感じ続けていたどろろは、赤ん坊の姿の百鬼丸を助けることで救いを見出していく。

旅を続け数多くの魔物を倒し身体の多くを取り戻しながら、まだ血が通わないためか、赤ん坊の姿のまま、なかなか動けるようにはならない百鬼丸。

そんな中、父である景光や母 阿佐比、そして弟の多宝丸が百鬼丸のことを知って、駆け巡るそれぞれの思い。

どろろと百鬼丸の前に立ちふさがる弟の多宝丸。弟と戦うことをためらう百鬼丸に向けて振り下ろされる刃。そして、それをかばって討たれるどろろ。この前後のどろろには本当に泣かされてしまう。

とうとう弟を手にかけ、赤い血を取り戻したことで、若者の姿を得た百鬼丸。背の高い美しい若者の姿、しなやかな身のこなし。しかし、流れる血が彼に激情を起こさせる。憎しみや復讐心にあおられるように、走る百鬼丸。

一方、彼の心は幼い子どもの声のまま、あの世に向かうどろろを探す。しかし、どろろの言葉に、心は己の身体を探す。母を討とうとしていた百鬼丸を心が見出し、百鬼丸は母へ向けて振り上げた刃をそっと下ろすのだった……。

時代物なのに、ほとんどが素足にジーンズというシンプルな衣装。そこにマントなどを加えることで雰囲気を出している。なのに魔物だけは、滑稽なほど凝った豪華な衣装だったり。

百鬼丸の「声」と「影」、つまり心と身体を黒衣の2人の役者が演じていたり。物語を進行する義太夫の語りや、時には義太夫のコーラスが入ったり。そこに、パーカッションなどの生演奏。象徴と具象が絶妙なバランスで配置され、物語にある種の神話的な普遍性を与えていた。

特に印象的だったのは、気の弱いどろろが身を賭して敵から百鬼丸を守ろうとする場面。妻や子を守れなかったどろろの切実な思いが沁みて、思わず涙が流れる。

また、百鬼丸と実の母との間の悲劇は、観ていて胸が痛んだ。

カーテンコールで、岡森さんが「今回の公演は短すぎた。近いうちにまた再演したい」という趣旨のことをおっしゃっていた。実現するなら、きっとまた観に行きたいと思う。
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by kiki_002 | 2009-07-12 12:59 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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