『ドリアン・グレイの肖像』
平成21年8月29日(土)14:00~、世田谷パブリックシアターにて。

作/オスカー・ワイルド
構成・演出/鈴木勝秀
音楽監督・作曲・ピアノ:前嶋康明

出演/山本耕史、須藤温子、伊達暁、米村亮太朗、三上市朗、加納幸和

19世紀末のロンドン。若く純粋で、そして素晴らしい美貌を持つ青年貴族ドリアン・グレイ。友人で画家のバジルが描いた、彼の肖像画。バジルの友人であるヘンリー卿の言葉に影響され、グレイはしだいに悪と快楽に溺れていく。しかし、年月や罪を重ねても、彼の美貌は衰えることはなかった……。

え~っと、これってどこまでネタバレ?いやだって古典だし、読んでなくてもどういう話かは知ってるよね、たぶん?そうでもないのかな?まあ、公演も今日で千秋楽だったし、とりあえずネタバレあります。ご容赦を。

開演直前、会場に流れてきたのは「スタンド・バイ・ミー」。そういえばこの舞台、スズカツ氏の演出だったっけ。

舞台の上では銀の髪の若者が、1枚の絵に向かってナイフを振り上げる。

場面は変わって。画家のバジルと友人ヘンリー卿の会話。バジルの傑作のモデルとなった美しい青年ドリアン・グレイの話題。そこへ当の本人が現れ、ヘンリー卿と知り合う。

若く美しいときは2度とないというヘンリーの言葉に心を動かされたグレイは、完成した肖像画に向かっていうのだった。「私の代わりにお前が歳を取って醜くなればいいのに」。

恋を知り、残酷な気まぐれや悪、快楽に身を染めていくグレイ。しかし、彼の容貌には罪による変貌も時間による衰えもなかった。彼の代わりに、バジルが描いた肖像画が歳を取り、醜くなっていったから。

秘密を知ったバジルを殺し、さまざまな罪を重ねながら、ある日グレイは、昔愛した女とそっくりの少女に出会う。彼女の善良さに打たれ、自分も変わるために、これまでの罪の証である肖像を切り裂こうとする。

しかし、ナイフで何度もその絵を切り裂いたとき、彼の上に死が訪れ、肖像が背負っていた老いや醜さが彼の上に現れ、肖像画はまた染みひとつない輝かしい若者の姿をとりもどすのだった……。


個人的な印象を言えば、竹宮恵子氏のマンガのように美しい舞台。ピアノの生演奏にのせて進んで行く、美しく同時に残酷な物語。ドリアン・グレイを演じる山本さんは遠目にもすらりとした美青年で、対するヘンリー卿は、珍しくも口髭とあご髭、そしてモミアゲのある加納さんが、チャーミングに演じていた。

悪徳を口にしながら、自らの手は決して悪に染めないヘンリー卿。最初は、彼がグレイを悪へと誘う誘惑者だと思った。観ているうちに、そうではない、彼は傍観者なのだと思い始めた。

知的で退廃的ではあるものの、彼自身は悪ではない。変わらないままのグレイをひとつの芸術として賛美するだけの普通の人間なのだ……と思った。

けれど、最後の場面で倒れたグレイの傍らに立つヘンリー卿を観たとき、やはり彼は誘惑者だったのではないかと、そんな気がした。その直前、善良に変わりたい、変わってみせる、と言って立ち去ったグレイの背に向かって見せた笑いもその思いに一役買っているのだろう。

いやいや、原作にはそんな風に書いてないはずだし、考えすぎかもしれない。あるいは、加納さんの演じるヘンリー卿の一筋縄ではいかない雰囲気が、そういうことを考えさせるのかもしれない。

肖像画がどう変わったか、多くは語られない。原作では、グレイが罪や悪徳を重ねるごとに、その結果が肖像を醜く変えて行く様子が具体的に語られていたけれど。

吊るされた大きなフレームがその絵を示しているだけの舞台。その空のフレームにグレイが何を観たのか、それを想像するのは、意外に恐ろしいことのような気がする。
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by kiki_002 | 2009-08-31 23:51 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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