タカハ劇団 第5回公演「モロトフカクテル」
平成21年10月18日(日)18:00~、座・高円寺にて。

脚本・演出/高羽彩

出演/
有馬自由(扉座)
畑中智行(演劇集団キャラメルボックス)
広澤草、恩田隆一(ONEOR8)、奥田ワレタ(クロムモブリデン)
石川ユリコ(拙者ムニエル)、山口森広、酒巻誉洋(elePHANTMoon)、浦井大輔(コマツ企画)、
西地修哉(726)、こいけけいこ(リュカ.)、小沢道成(虚構の劇団)


……わたしたちは あの時代を なつかしむことはできない

弱体化した日東大学学生自治会は、ある日突然、当局から自治会室閉鎖命令を突きつけられる。なすすべもなくうろたえる学生たち。そんな彼らを静かに見つめる一人の中年男性の姿があった……。

すれ違い続ける想いは一体どこに行き着くのだろうか。
絶対に越えられない人と人との隔たりの向こう側で、「連帯」の幻想は苦く、限りなく甘い。

「失われた10年」に生まれ、「ロスジェネ世代」と名付けられた僕らは、自分たちがいったい何を失ったのかも分からないまま、抗いがたいこの現代を生きている。
闘い方なんて誰も教えてくれなかった。
「全共闘」「政治の季節」、かつてそんな言葉が存在してたことは知っていても……。

初演時、早稲田大学構内で上演され話題になった「モロトフカクテル」が座・高円寺で満を持しての再演! 全ての世代の心に突き刺さる「闘い」の物語。(劇場HPより)

     ※       ※       ※

『伝説の……』という言葉に思わず惹かれてしまうのは、『限定』と言われて思わず衝動買いしてしまうのと同じくらい、私がミーハーだという証拠かもしれない。

このタカハ劇団については、去年の8月に納涼番外企画公演「ボクコネ~ぼくはテクノカットよりコネチカット~」という作品を観たことがある。ありふれたアパートの1室から始まる奇想天外な展開に目を奪われ、やや残酷な、そしてリリカルなエンディングが印象に残る作品だった。

今回観に行こうと思ったのは、どなたかが作品について書かれた文章の中に、『伝説の舞台』という言葉が使われていたから……だったような気がする。

2年半前、早稲田大学の構内で、学生によって演じられたこの作品が、今度は座・高円寺という劇場で上演されることとなった。

自治会室閉鎖への抵抗とかつての学生運動を真ん中に据えて、戦い方を知らない若者たちと、かつての戦いに悔いを残す定年間際の大学職員 吉田と、それぞれの胸の中で燃える炎を、切実に描いていく。特に、吉田を演じた有馬さんの圧倒的な説得力と存在感が、この舞台の輪郭を明確にしているように思えた。

……しかし、初演ではすべての役を学生が演じたと聞く。たとえば吉田が、過去の追憶とも幻想ともつかず、かつての同志と語り合う場面。あるいは、火炎瓶を握り締めて走り出すラスト。それらを学生が演じていたら、観る者に感じさせる意味合いは、ずいぶん違ったものになるような気がする。どちらがいい悪いではなく、ただ純粋にその形も観てみたかったという好奇心がそそられる。

若い作り手がなぜ学生運動についての作品を、と聞かれるらしい。でも、戦国時代を描こうが、幕末を舞台にしようが、太平洋戦争だろうが、学生運動だろうが、過去は過去。知識としてしか知らない時代のどこかが琴線に触れて、そこに自分の思いを込めるしかないんじゃないだろうか?

ただ違うのは、このテーマの場合、その戦いの中で生きていた人が、いまも一緒に暮らしているということ。いまと地続きの現実だと言う、そのことを活かして書かれた物語だったと思う。

私の中に戦いの炎は燃えているか。
この世界の何時何分を生きているのか。

そういう気恥ずかしいような問いが、今の時代の日常や言葉と乖離せずにストレートに伝わってきた。

以前観た「ボクコネ」は見慣れない変化球だったけれど、この「モトロフカクテル」は、ど真ん中の直球だった。それも、 ずっしりと重い球威のある球。しっかりとミートしないと打ち返せない。

初演では、早稲田大学の学生会館が会場だったこの芝居、真新しいこの劇場がやや広過ぎたのだろうか、何人かの役者さんが声を嗄らしてしまっていたのが少し残念だった。

2度目のカーテンコールで、主宰の高羽彩さんの両肩をそっと前に押し出すようにして、観客に彼女を紹介する有馬さんが、長く舞台に立ってきた人の余裕を感じさせて素敵だった。

ちなみにモロトフカクテルとは、火炎瓶のことらしい。若者たちにメールを送るときにこの名前を使った吉田は、何を思っていたのだろう。
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by kiki_002 | 2009-10-18 23:54 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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