ファージョン作品集③ 『ムギと王さま』
著者:エリナー・ファージョン
訳者:石井桃子
出版社: 岩波書店
発売日: 1971/9/8

昨日、ふと本棚を見ると、なぜか1冊の本が目に付いた。『ムギと王さま』。そうだ、これは自分の大好きな本のひとつ。こんな天気のいいお休みの日には、読みかけの本を後回しにして、この懐かしい児童書を開くのもいいかもしれない。

作者自選による27編の子どものためのお話。学校にも行かず本に埋もれるように育ったファージョンが、70歳を過ぎて自ら選んだ珠玉の作品集。彼女はこの本で、カーネギー賞をはじめとするさまざまな栄誉を得ることになる。

儚く美しい夢のような短い話。ナンセンスで滑稽な話。あるいは子どもの日の小さな冒険やときめきに満ちた話。さまざまなタイプの物語がある中で、特に好きな作品が2つある。

ひとつは、「〈ねんねこはおどる〉」。10歳の少女と110歳の曾祖母のささやかな暮らしに訪れた危機と、彼女たちに伝えられた子守唄のもたらす小さな奇跡。110歳のカーフューばあちゃんの愛らしさや、それをこころから慈しむグリゼルダの健気さに、心が洗われるような気がする。

もうひとつの作品は「しんせつな地主さん」。これは、そう、なんて言ったらいいんだろう?読むたびに、どうしてか泣けてきてしまうのだ。

金持ちでケチで冷酷なロバート・チャードンが、愛した妻とその忘れ形見の小さな娘のために変わっていく姿が、素朴な言葉で綴られていく。昔話のような、あるいは寓話のような、そして、私にとってはとてつもなく美しく思われる物語。これを書いたファージョンという人は、きっと人間というモノを信じていたのだろう…・・・。これを読むと、そんな気がしてならない。

エリナー・ファージョンの本では、この『ムギと王さま』と並んで『リンゴ畑のマーティン・ピピン』という本も大好きな作品なので、機会があったらぜひ併せて読んでみていただきたい。

なお、手元にあるのは分厚いハードカバーだけれど、岩波少年文庫からは『ムギと王さま―本の小べや〈1〉』と『天国を出ていく - 本の小べや〈2〉』の2冊に分けて出版されているようだ。

こうしてみると、自分の核にある部分というのは、子どものころからほとんど変わっていないのかもしれないなぁ、などと思ってみたり。そんなふうに過ごす休日もたまにはいいものだ。
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by kiki_002 | 2009-11-24 23:57 | | Trackback | Comments(0)
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