劇団扉座第44回公演「サツキマスの物語」東京公演
作・演出/横内謙介

出演/
近藤正臣(特別出演)
岡森諦 杉山良一 中原三千代 有馬自由 伴美奈子 犬飼淳治 
累央 鈴木利典  岩本達郎 上原健太 鈴木里沙 安達雄二
江原由夏 上土井敦 串間保彦  栗原奈美 藤本貴行 小嶋喜生
菊池均也(客演)  三村晃弘(客演)


「故郷を出るあまごは志なんか持って海を目指すんじゃないと思う。
生まれた川に居場所がなくなって、止むにやまれず、泣きながら川を下るんだ、きっと……」

川釣りと、橋からの飛び込みが名物の山間の町。

遊び半分で飛び降りた観光客の死亡事故が続き、伝統儀式の飛び込みも自粛を余儀なくされた。

そんな時、町の若手たち「チームあまご」が立ち上がり、新しい町興しに取り組み始める。

それは町にあった玉突き場を復活させ、町が生んだ出世頭(サツキマス)である女子プロ・ビリヤード選手を呼び戻すことだった。

しかし、そのことが多くの人の古傷を、呼び起こすことになった……

(劇団HPより)

           ※       ※       ※

最近すっかりハマっている劇団扉座「サツキマスの物語」。厚木公演に続いて、東京公演も観てきた。

何度観ても、いいなぁ……と思うのは、有馬自由さん演じる昇平だ。役場の職員である彼は、一度も小さな町から出て暮らしたことはないのだという。しかし、彼には自分の守るべきものやなすべきことがわかっている。若者たちの頑張りが現実の壁にぶつかったとき、彼が下した決意に敬服する。自分なら、あんなふうには言えない。ああいう誠実なオトナになりたいものだと思う。

釣り名人の最後の弟子、丈二。犬飼さんの演じるこの丈二は、実在の人物をモデルにしているそうで、自然とともに暮らしながら、朴訥さの中に毅然としたものを感じさせる魅力的な人物。

ビリヤード場リバーサイドのオーナー啓三。近藤正臣さん演じるこの啓三は、町の不良の溜まり場だった玉突き場のオヤジ。洒脱で大人の魅力たっぷり。

この3人は、この町にキチンと自分の居場所を持っている。この小さな町とそこに流れる川を愛している。そういうことが大切なのだと、観ているうちにしみじみ思えてくる。

町興しのプロジェクトを進めるチームあまごの若者たち。それぞれの個性、それぞれの立場。安達雄二さん演じる源次の、しっかり者らしい言動がけっこうツボ。もちろん、頼りないリーダーの吾郎や、気の強い秋子、短気そうな太一、潔癖なマドンナ玉枝、ひょうきんで客商売にピッタリの睦夫など、それぞれに愛着がわいてくる。

客演の菊池均也さんが演じるのは、チームあまごと共にプロジェクトを進めてきた平野。町を出て都会で暮らしていたが、傷害事件を起こして7年の実刑判決を受けた過去がある。母の介護のために町に戻ってきていた彼が、町興しの企画公募で最優秀賞をとり、その案を実現させようとするのが、このプロジェクト。しかし、彼の過去にこだわる者からの抗議の投書が役場へ送られてきて……。

東京から来る釣り客の柳田。2年前に大病をして以来、エリートサラリーマンから釣りのために仕事を休むようなタイプに変わったという。サツキマスを釣りに来て、この小さな町の人々と触れあっていく。

世界3位にまでなったプロビリヤード選手 歩。父の再婚をきっかけにグレてしまい、20年前に町を飛び出して以来ずっと帰ってなかったらしい。伴美奈子さんの演じるこの歩を中心にこの物語は動いている。彼女の過去、彼女の悔い。厳しいプロの世界を生き抜いてきたしたたかさと、過去を引きずる弱さと。家族との再会の場面は、観ていても胸が痛む。

お目当ての累央さんが演じるのは、歩のマネージャー金子。軽い感じの人物だけれど、歩にたきつけられて、町のプロジェクトをのっとろうとしたり。それも結局上手くいかないヘタレさ加減が憎めない。遠慮ない口を利きながらも、歩は金子をけっこう頼りにしていたり。

町で生まれ町で育って町で暮らすものたちと。外へ出てまた戻ってくるものと。外から来るものたちと。

それぞれの思い、それぞれの事情。誰もが必死に生きていくその様子を観ているうちに、じんわりじんわりと心が温かくなってくる。

初めて聞くはずの方言の響きが、なぜか懐かしく。川と空からビリヤード場へと移るセットが美しくて。

きっとこの話を書いた横内さんは、人間というものが好きなんだろう、そして、この世界の美しさを愛しているのだろう……なんとなくそんな気がした。
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by kiki_002 | 2009-12-09 23:57 | 舞台 | Trackback | Comments(4)
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Commented by モトリークルー at 2009-12-10 21:24 x
少しお久しぶりです。財布見つかって何よりです。 「サツキマス」の記事 とても 嬉しいです。誰がどんな役柄だったのか 解らなかったので 助かりました。ありがとう。ホント 美しい舞台だったのですね。少し羨ましい。でも なんか 若干客入りが寂しかったとか? 残念と言うか 理解できないですね。扉座の 横内さんの舞台なのにね。 う~ん(´・ω・)
Commented by kiki_002 at 2009-12-10 23:21
モトリークルーさん、いろいろと大変でしたね。お疲れさまでした。

「サツキマス」の感想、ご覧いただいてありがとうございます。
Remiさんと2人で、モトリーさんに観てもらいたかった、と残念がってました。

客席は……そうですね、
目立つほどではなかったですが、土日も満席ではなかったようです。
いい舞台なのに、ホントもったいないと思います。

次の「ドリル魂」は、盛り上げていきたいですね。
Commented by モトリークルー at 2009-12-11 00:28 x
温かいお言葉 感謝します。ありがとう。サツキマスはホント観たかったですが反面こちらの舞台で貴重な経験が出来ましたので。舞台は怖いです。ホント!!
「ドリル魂」 盛り上げていきましょうね。僕たち三人家内も入れて四人に凄く大切な作品ですもんね。頑張りましょう。
Commented by kiki_002 at 2009-12-11 02:18
ご自分たちで作り上げた舞台、
それもアクシデントを経て、苦労して作っていった舞台では、
きっと得るものも大きかったことでしょう。

「ドリル魂」、大切な作品と言ってくださって、うれしいです。
……って、私が言うのも変ですが(汗)。
だって、好きなんだもん!
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