『国盗人』―W.シェイクスピア「リチャード三世」より―
平成21年12月6日19:00~、世田谷パブリックシアターにて。

作/河合祥一郎
演出/野村萬斎
作調/田中傳左衛門
美術/松井るみ
衣裳/コシノジュンコ

出演/
野村萬斎、白石加代子
石田幸雄、大森博史、小田豊、山野史人
月崎晴夫、じゅんじゅん、すがぽん、泉陽二、若松力、中村美貴
時田光洋、坂根泰士、平原テツ、入月謙一
大竹えり、黒川深雪、髙島玲


2007年の初演を観て、すっかりハマってしまったこの作品。シェイクスピアの「リチャード三世」を元に、狂言やその他さまざまな要素を大胆に組み入れて、印象的な舞台を作り上げていた。

2年半ほど経って再演された作品を観て、改めて強い印象を受けた。

「悪党になるしかない」と、悪三郎=リチャード三世が冒頭で独白する。戦いが終わって訪れた平和に、喜びを見出せないのは、自分が醜く人に愛されないからだと。

自ら手にかけた男の妻を娶り、兄を陥れ、幼子を手にかけ、共に陰謀を重ねてきた臣下を殺め、次々と悪事を重ねていく。

初演時にあったいくつかのお遊びがなくなり、全体にシンプルになっただろうか。その分、悪三郎の悪党ぶりが強調されているのかもしれない。

そんな陰惨なストーリーなのだけれど、なぜか、悪三郎を憎むことはできない。

特に終盤。実の母から戦場での死を予告され、手にかけたものたちの亡霊にうなされる様子を観るとせつなくなってしまう。

宿敵 理知門との対決前夜、舞台手前に横たわる悪三郎。現れる亡霊たち。呪いの言葉を浴びて、苦しそうに片手を胸に、もう一方の手で舞台のふちをつかむ。その孤独で不安な魂が哀れで、胸が痛む。

一夜明けて、戦いの日。最初のうちは獅子奮迅の戦いぶりを見せる悪三郎なのだけれど、戦場で馬を失ってしまうと、不自由な足では戦いも覚束ない。「馬をよこせば、国をくれてやる!」血を吐くような叫び。

悪三郎が亡霊たちに動きを止められたとき、理知門の刃が彼の上に。ゆっくりと弓なりに倒れていく悪三郎。

そして、勝利と正義に酔う理知門の後ろに、悪三郎とともにあった影がそっと寄り添う……。

戦火を浴びて焼け落ちたような能舞台。最初と最後に現れる日傘の女。死の象徴となる面。お囃子の生演奏。舞台の奥の舞台。

影役のじゅんじゅんさんの巧みさや理知門を演じる若松力さんの凛々しい声、主要な女性4人を演じる白石加代子さんの鬼気迫る演技。そして何より、舞台中を悪三郎として駆け抜ける萬斎さんの存在感がこの舞台の独特の世界観を成立させているような気がした。

和でもなく、洋でもない。古典でもあり、モダンでもある。薄闇の中の独特の雰囲気が心地よく、陰惨なはずの物語がどこかせつなく哀しいものとなった、そういう舞台。

ただひとつ、初演との違いで言えば、王位を得た悪三郎がハンドマイクで歌う場面がなくなったのが、個人的には淋しい。作品としてみたら、それで完成度が高まるのかもしれないけれど、型破りなこの舞台の象徴のような場面だと思っていたので。
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by kiki_002 | 2009-12-10 23:58 | 舞台 | Trackback | Comments(2)
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Commented by TSUSSY at 2009-12-11 16:34 x
kikiさんのブログを読んでいたら「国盗人」観たくなってきちゃいました。
偶然的にも私も2007年の公演を観劇してます。
舞台好きってどこかで繋がるものなんですかね^^。
「国盗人」は劇場に入った瞬間から「国盗人」の物語の世界に入っていくような…とにかく、わぁ~っと感動させられた記憶が残ってます。
舞台を観て圧倒させられた作品のひとつです。
Commented by kiki_002 at 2009-12-11 23:17
「国盗人」、今回もまた圧倒されるような、印象的な舞台でした。
あの舞台装置やセミの声が劇場にマッチして、
確かに、開演前から雰囲気に浸れますね。

それにしても……。
きっとこの「国盗人」以外にも、同じ芝居を観てるかもしれませんね。
そう思うとなんだか不思議な気がします^^。
だって、好きなんだもん!
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