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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

PEOPLE PURPLE『ORANGE』

平成22年1月17日(日)13:00~、吉祥寺・前進座劇場にて。

え~っと、まだモタモタと先週末観てきた舞台の感想を書いてま~~す。すいません!

脚本・演出/宇田学

出演/
宇田学・山根基嗣・植村好宏・森下仁佐恵・袋小路林檎・柏村有美・吉井ミワ・
濱谷晃年・鎌田亜由美・伊部夢花・北原絢子・習田歩未・沖元大輔・西野俊大 

七條孝夫(Felix)・原敏一(劇団赤鬼)・一明一人・宇仁菅綾(ババロワーズ) 他 

あらすじ/
舞台は、神戸の「湊山消防署」。ここには日々命の最前線で闘う者たちが居た。
湊山消防署の小日向や石丸は普段はふざけあったり、鍛錬しあったり、談笑しあったり、何気ない時間を過ごしていてもいざ指令が入れば自分の命をかけてでも要救助者のために災害現場に突入する。消防士なら誰もが憧れる特別救助隊員。
通称「オレンジ」
だが、そんな彼らも「あの時」大きな敗北感を胸に抱えていた。

―――あの時、何が起こったのか。―――

阪神・淡路大震災。その時に起こった真実の物語が、そして今なお災害と闘い続けている消防士達の真実の姿が、明らかになる。

―――命とは。

最大のスケールで、最大のテーマに挑む。誰もが涙し、誰もが称賛した感動巨編がここに。
あなたは、いのちの輝きを目撃する――――。(劇団HPより)


いや、これはねぇ……。勧めていただいた方々に感謝したい、そういう舞台。今年はまだ1月も終わらないけど、2010年の観劇まとめを書くときに、きっと触れざるをえない作品だろうと思う。この勘はたぶん、外れません。

劇団の公式HPにあったあらすじを読んでも、聞いていた話から想像しても、重いドキュメンタリータッチの作品を予想していた。

けれど舞台が始まったとたん、オープニングはダンス。……えっ?

それから始まる物語、訓練や作業の様子と併せて、まず印象に残るのは、個性的だけれど、ごく普通の人々の日常。冗談も言う、デートもする、けれどいざ現場へ、という事態になれば、頼れるプロとしての顔で災害に立ち向かう。

そこで彼らが守るべきものは、人々の命。その重さが、彼らの肉声を通して、すぐに観ている我々にも伝わってくる。

ああ、と観ていて思った。テレビではない、映画とも違う、舞台でのドキュメンタリーって、こういうことなのか。

災害の真っ最中でも鎮火した後でも、舞台のセットが大きく変わるわけではない。照明や音楽、人々の演技で状況はきちんと伝わるけれど、そういう場面の迫力で言ったら、大掛かりな映像で表現した方がきっと伝わりやすいだろう。

しかし、その災害の中で、人が何を思い、どう感じているのか、そういうモノが生々しく伝わってくるのは、目の前で生身の人々が演じている舞台ならではなのではないか、そんなことを漠然と思ったのだ。

ま、それはともかく。

過酷な状況。一秒を争って、的確な判断が求められる現場。その中をオレンジのユニフォームを身につけたレスキューが行く。

そんな彼らが、レスキューを目指す後輩たちに伝えようとしたのは、それは15年前のあの震災のこと。

この回想シーンが、圧巻だった。

突然の大地震。助けを求める人々。崩れ落ちた家々。機材も物資も水もままならない状況下で、必死で戦う彼ら。彼らにだって、家族がいるだろう…と思った矢先に、病院からの連絡。それでも、持ち場を離れないで戦い続ける……。

助けを求める声。助けられなかった命。その痛ましさに、会場中がすすり泣く。

そんな経験を若者たちに伝えながら、彼らはいまもより多くの命を守るために戦っている。そして……。

いや、もうねぇ、泣きました。こんなに泣いちゃ、ひどい顔になってしまって帰りに外を歩けないんじゃないか、なんていう馬鹿なことをチラッと思いつつ、泣きました。

それでも、つらいことや哀しい場面ばかりではなく、日頃の彼らの明るさや友情、そして悩み苦しむことがあっても、やはり前に向かって歩き出そうとする勇気に、力づけられたりもした。

実際のレスキュー全員から話を聴いて書いたというこの作品。事実の確かさと切実さが、この芝居に力を与え、それを多くの方に伝えようとする劇団の方々の思いが、この舞台の感動を支えているのだろう。

命の大切さを真正面から描いた骨太な作品。大きなメッセージを、きちんと芝居として昇華させたその力技。

あれからちょうど15年目となった日に、この作品を観ることができてよかったと思う。ありがとうございました。
by kiki_002 | 2010-01-24 23:57 | 舞台