「終末のフール」
著者:伊坂幸太郎
出版社: 集英社(集英社文庫)
発売日: 2009/6/30

伊坂幸太郎さん、いいなぁ。いま、好きな作家は誰?って訊かれたら、この方の名前を挙げる気がする。

どこがいいって、とにかく登場人物が魅力的なんだよね。

表題作「終末のフール」に出てくる和也は、子どものころ魔物を退治しに行こうとしたし。

「太陽のシール」の土屋は、高校時代サッカー部のキャプテンで、彼さえいればどんなピンチでも逆転できるような気がするほどチームメイトに信頼されていたし。

「冬眠のガール」に出てくる太田君は切ない初恋の象徴のようだし、小松崎さんも変人だけどどこか魅力的だし。

「鋼鉄のウール」に出てくるキックボクサーの苗場さんは、ホレボレするくらいストイックだし。

「天体のヨール」の二ノ宮は主人公の学生時代からの友人で、ものすごくマイペースなようだけどけっこう周りは見えてたりするし。

ここに名前を挙げた登場人物は、実はみんな脇役で、それどころか物語が始まる前に死んでしまったキャラクターも含まれていたりする。

主人公やその周囲の人々も、もちろんそれぞれ個性的で魅力的なんだけど、それ以上にこんなふうに印象に残る脇役が出てくることで、物語に奥行きが生まれるのではないだろうか。

この本は、あと3年で地球が破滅する(!!)という時代のある街を舞台にした短編連作で、それぞれ主人公を変えながら、同じマンションやスーパーが登場したり、前の作品の登場人物がまた顔を出したりと、ゆるくつながりながらも1話ずつ完結していく。

上記のとおり、それぞれの短編のタイトルが「○○の○ール」という形に統一されているのも面白いが、実は半分以上読み進むまでそれに気がつかなかった(汗)。いや、目次を見れば一目瞭然なのにね。

地球の滅亡……などというダイナミックな設定なのだけれど、パニック小説でもないし、救世主も正義の味方も登場しない。小惑星が衝突するとわかって、パニック状態になったのは、もう数年前。すでに人々は落ち着きを取り戻しはじめ、ささやかな日常の営みを続けようとしている。

それでも、3年というリミットは見えていて、それが近づけばまた混乱したり足掻いたりしてしまうだろうけれど。

つかのまの落ち着きの中、人々がどう生きようとするのか、何をしていくのか。大げさではなく、不自然でもなく、些細な迷いや恨みや困惑を抱えながら……。

どの短編も、読み終えて少しだけ体温が上がるような、人間ってまんざら悪くない…と思えるような、そういう物語。地球滅亡を前にしたとき、私はどうするだろう?あるいは、地球滅亡を前にしなくても、私はどう人と向き合っていけばいいのだろう?そんなことを思いながら、この本を閉じた。
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by kiki_002 | 2010-03-12 01:00 | | Trackback | Comments(0)
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