『マクベス』
平成22年年3月20日(土)14:00~、世田谷パブリックシアターにて。

作/W・シェイクスピア
訳/河合祥一郎訳 『マクベス』より
構成・演出/野村萬斎

出演/野村萬斎、秋山菜津子、高田恵篤、福士惠二、小林桂太

シェイクスピアを原作として新たな劇世界を切り拓いた『まちがいの狂言』(「間違いの喜劇」)、『国盗人』(「リチャード三世」)に続き、野村萬斎が『マクベス』に挑みます。2008年10月のリーディング形式による上演(シアタートラム)から、テキストを再構成し、大胆な演出をほどこします。
たった5人で演じるシンプルかつパワフルな『マクベス』に、どうぞご期待ください。
(劇場HPより)

順序が逆になってしまったけれど、先週末観てきた『マクベス』についての感想を。

たった5人、たった1時間半で描かれる、無駄を削ぎ落とされたタイトなマクベス。『国盗人』は『リチャード三世』の翻案だったが、これはそのまま『マクベス』として演じられるということで、予想では原作に忠実なモノとなるのだろうかと思っていた。

しかし。

冒頭、ステージは白い半円状の…いや半球状のモノで覆われている。そこに月が昇り、独特の世界観を感じさせる不思議な言葉が語られる。そして、白い半球越しに、男が刀を振るうシルエット……。

抽象的で印象的なプロローグが終わると、3人の魔女が蠢き始める。演じる高田恵篤さん、福士惠二さん、小林桂太さんの卓越した身体性。この方々の魔女を観られただけでも、この『マクベス』が演じられた価値があったという気がする。

そして、魔女たちとマクベスの出会いの場面。気がつけば、魔女のひとりはいつのまにかバンクォーとなってマクベスと共に歩いている。

その栄光に満ち、同時に不吉な予言。予言の一部がすぐに真実となったことで、マクベスの野心に火がつくのだが……。

すぐに迷い、思い悩むマクベスの人間味と、叱咤するマクベス夫人の気丈さ。そして、マクベスと夫人のキスシーンの美しかったこと。

マクベスの悩みや迷う部分をたっぷりと描きながら物語は進んで行く。

惨劇の後、再び魔女たちの予言。それは、「女から生まれた者にマクベスは倒せぬ」と「バーナムの森が向かってくるまではマクベスが滅びぬ」という、あまりも有名な2つの予言。その場面の魔女たちの、のたうち、うごめく異形の姿。

しかし、しだいにマクベスは追い詰められていく。それに伴って、狂気が彼を支配していくように見えて。夫人の死の辺りから終盤にかけて、舞台に降り注ぎ始める真っ赤な葉。

魔女たちの仕掛けた罠にマクベスが気づく瞬間の凍りつくような表情。それでも、諦めることなく刀を振り上げるマクベス。そのまますぐに見えなくなって再び現れたのは、すでに人の形をとどめないマクベスの残骸だった……。

その無残なパーツを魔女たちが持ち上げると、白い花が一輪。その瞬間の静謐さは、しみじみと心に沁みてくるように感じられた。

権力争いや歴史的な背景、多くの人々の関係性などをスッパリと切り取って、マクベスというひとりの男とその妻が、魔女に魅入られて滅んでいく過程を描いたシンプルな『マクベス』。冒頭の広大な世界観と白い花が一輪だけ咲いていた静かなラストが、マクベス夫妻の滅亡をひとつの神話のように感じさせていたようにも思えた。
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by kiki_002 | 2010-03-29 00:06 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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