世田谷シルク公演「春の海」
平成22年4月11日(日)13:00~、17:00~、シアター711にて。

脚本・演出/堀川炎

出演/
金川周平(東京オレンジ)、堀越涼(花組芝居)、松下幸史(動物電気/乱雑天国)、
今井彩(東京コメディストアJ)、帯金ゆかり(北京蝶々)、守美樹
えみりーゆうな、大竹沙絵子、原麻理子、山本映子、その他

舞台は学習教室。そんな教室の片隅でヤドカリはこっちを見ている。
先生の号令・あいさつ。教室は海へと変わっていく。
残されたヤドカリは浜辺にぽつんと残されたまま、海を泳ぐ魚を眺める。

生徒の一人、山田君は授業中にいつも自分の話ばかりしている男の子。
マッチで遊んで、この間はやけどをした。
アルバイトの学生は彼に手を焼きながらも、辛抱強く見守っている。
山田君はおじいちゃんとおばあちゃんと住んでいるらしい。

ヤドカリはいつか新しい住処を求めて、また貝殻を探す旅に出る。

教室と海を舞台に、先生・子供・お家の人・海の生き物を全員で演じるコラージュ群像劇。
(CoRich舞台芸術HPより)


これまで、東西の古典と現代の若者風俗などを組み合わせたコラージュ演劇を上演してきた世田谷シルクだが、今回は初の完全オリジナル。

作品の舞台となるのは、隣町まで車で30分という不便な山間の村。そこには小さな学習塾があって、理科の実験を中心に行っていた。「実験室」と呼ばれるその塾に、子どもたちは楽しそうに通ってくる。

実験室の小学校3年生のクラス。その子どもたちのひとり、山田くんという男の子だけは、姿が見えない。ただ周囲の先生や生徒の動きや目線で、そこに少年がいるとわかるだけだ。そして、スライドに映し出される文字がその子の言葉を表している。

奇妙な欠如。しだいにその理由がわかってくる辺りはとても面白い。

20年前と現在、そしてダムが完成した後の3つの時間軸を行ったり来たりしながら、物語は進んでいく。これまで、古典と現代劇を組み合わせて見せてくれたように、今度は同じ場所に違う時間を重ね合わせ、過去と現在、子どもとオトナがテンポよく切り替わっていく。

ダムに沈む村という題材を扱いながら、反対運動やその村の生活を正面から取り上げる代わりに、子どもたちの過ごす教室の過去の映像と沈む村の様子でドキュメンタリー映像を創ろうとしている男の行動を通して、政治的な主張ではなく、村の人々の情の部分をすくい上げていく。

新しい住処を探すヤドカリ。沖縄の海にしかいないはずのヤドカリと山奥の村に現れた海……。違う時間を過ごす登場人物がそれぞれ重なっていく面白さと、姿の見えない山田くんがカギとなって、失われていく故郷への思いが浮き彫りになっていくように思えた。

少しだけ贅沢を言うなら、実験室以外の生活やの周辺の様子がもうイメージできたら……と思ったり、堀川さんが演じる子どもが見たかったな、と思ったり。

まあ、そんなワガママはともかく。

子ども同士のケンカや意地の張り合い、淡い恋心など、「まだ人間じゃない不思議な生き物」と言いながらも、子どもの感覚を描くその確かさにノスタルジーを覚えた。

あまりいろいろ考え過ぎずに、この芝居のリズムに身をゆだねれば、どこか懐かしい景色を観ることができるかもしれない。
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by kiki_002 | 2010-04-12 23:58 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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