劇団ZAPPA第15回公演「鬼 ONI」
平成22年4月24日(土)碧組、5月3日(月・祝)紅組、東京芸術劇場小ホール1にて。

作・演出/澤田正俊

出演/
碧組
タダ:南利寛(劇団ZAPPA)、イネ:三島冨美子(劇団ZAPPA)
緒方惟準:寺岡哲、おげん:池田奈美子(フラッシュアップ)、久吉:吉本猛士
戸塚春山:澤田正俊(劇団ZAPPA)、花:喜多史江(㈱フェイスプランニング)
伊東玄朴:大西達之介(アートプロモーションSARA)、日野鼎哉:川手隆嗣(ダブルアップエンターテイメント)
とみ:五十里直子、おくま:ひらはらももゑ(劇団ZAPPA)、おきみ:青木裕美子
有村治左衛門:七原靖、日下部裕之進:片柳克敏、日下部律:石田小百合(東京P.R.O)
中居重兵衛:小菅達也、関鉄之助:山本恵太郎(集団asif~)、黒澤忠三郎:橋本仁
元:斧口智彦(ニチエンプロダクション)、さち:松菜美樹、三郎:山崎剛芳
多紀安元:川守田政人、瓦版屋他:矢ヶ崎昌也

紅組
タダ:北田拓朗、イネ:新田えみ(サムライプロモーション)
緒方惟準:皆木俊彦(三木プロダクション)、おげん:冨山華園、久吉:都筑大輔、
戸塚春山:澤田正俊(劇団ZAPPA)、花:橘 志乃
伊東玄朴:川守田政人、日野鼎哉:坂井虎徹
とみ:押川チカ、おくま:らむ、おきみ:青木裕美子、
有村治左衛門:広瀬圭祐(株式会社レジェンド)、日下部裕之進:北崎秀和、日下律:坂本和代(BIA)
中居重兵衛:柳田幸則、関鉄之助:岡田昌也、黒澤忠三郎:河野誉生(風凜華斬)
元:遠藤亮(スターワールド学院)、さち:大久保悠依(グランマザー)、三郎:山崎剛芳
多紀安元:大西達之介(アートプロモーションSARA)、瓦版屋他:矢ヶ崎昌也

幕末エンターテイメントを上演し続ける劇団ZAPPAの第15回公演「鬼 ONI」を観てきた。友人にこの劇団を教えてもらって、これで3公演目。毎回、登場人物の熱い思いに涙し、迫力ある殺陣を堪能し、すっかりハマってしまいつつある。

今回のテーマは『医』。幕末を舞台に医学の話というと、昨年評判になったあのドラマを思い出してしまうけれど、この作品の初演は2004年だそうなので、別にドラマからインスパイアされたという訳ではないらしい。

蘭学、今でいう近代西洋医学が充分に知られていなかった時代に、感染力と致死率の高い疱瘡(天然痘)の予防のため、種痘(予防接種)を広めようとした蘭学医たちを中心に物語は進む。

特に、江戸で診療所を開いている春山、蘭学医初の奥医師(将軍とその家族を診る医師)を目指す玄朴、関西で種痘所を成功させ、江戸で種痘所を開こうとする鼎哉。この3人は、ともにシーボルトの下で学んだ仲間だった。彼らは、病と不幸な偏見のために死を迎えた女性 花のために、天然痘と闘い続けていた。

しかし、無知と偏見、そして漢方医で奥医師である多紀安元の妨害などにより、なかなか種痘は広まっていかなかった。

そんな中、1人の奇妙な男が現れる。名をタダといい、山から降りてきたばかりという素朴で無邪気な男だったが、しかし彼は、当時の常識からは考えられないような医学の知識と技術を持っていた……。

一方、薩摩藩の在府組である有村治左衛門は、大老井伊直弼の暗殺計画に加わっていたが、実行前に裏切り者によって襲撃され、重症を負う。春山の診療所に運び込まれた彼の回想として、井伊大老暗殺へ向けたこれまでの動きが語られる。

……こんなふうに書いていくと、なんだかカタい話のように見えるけれど、実際は登場人物1人1人の思いをすくいあげるようなエピソードを重ね、笑ったり、泣いたり、ハラハラしたりしながら、観ることができた。

春山の診療所で働く若い医師たちの思い。それを支える下働きの女たちの強さ。天然痘にかかったことで差別され、親にまで捨てられた子どもたちの悲しみ。治左衛門と仲間の妹 律の淡い恋。タダとシーボルトの娘 イネのお互いを思う気持ち。それぞれの思いに共鳴して、観ているとどんどん引き込まれてしまった。

また、ステージ上だけでなく、ステージの前や通路などまで所狭しと役者さんたちが走り回り、会場中がこの物語の世界に巻き込まれていくようだった。

そして、ダブルキャストということで、同じ脚本で同じ思いを伝えながらも、演じる方が違うとずいぶん印象の変わるなあ、と思うところもあった。

特に印象を左右したのは、タダだろう。この不思議な人物を、どちらもそれぞれ魅力的に演じてくれた。

南利寛さん演じる碧組のタダ。彼は揺るがない。ニコニコと優しく笑いながらも、無邪気さの中に毅然とした強さがあって、理不尽な相手に対峙するその姿勢に、思わず息を呑む。

北田拓朗さんが演じた紅組のタダ。彼は柔らかい。柳が風を受け流すように、斬り落とされた腕さえ何でもないことのように、飄々と繋いでみせる。

面白かったのは、奥医師の多紀安元と蘭学医の玄朴を、大西達之さんと川守田政人さんが入れ替りで演じられていたこと。対峙する場面が多い2人だけに、「ええ~?この人この前は悪い方だったのに~~」などと一瞬混乱しそうになったりもした。

一番切なかった場面は、元がさちを背負って祭へ向かうところ。天然痘にかかったことで親から捨てられ、人から利用され、そして死んでくこの兄と妹の運命があまりに悲しくて、思わず涙があふれた。

すでに天然痘は根絶された。物語の終わり近く、1人の若い医師が何気なく口にしたとおり。しかし、病も偏見も、そして争いも、まだこの世の中から消えてはいない。観終わってふと、そんなことを思ったりもした。
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by kiki_002 | 2010-05-10 00:02 | 舞台 | Trackback | Comments(2)
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Commented by axe at 2010-05-10 17:09 x
ご来場ありがとうございました。
碧組、元を演じていたものです。

感想、非常に嬉しく拝見させていただきました。
そういったお客様の思いが伝わって初めていい舞台になったと思います。
Commented by kiki_002 at 2010-05-11 00:18
axeさま、コメントありがとうございます。

『花』での健彦役もよかったですが、
今回の元という役は、よりいっそう印象に残りました。

終演後、お声をかけたかったのですが、
ちょっと気後れしてしまったのが心残りです。

心に残る舞台を、ありがとうございました。
だって、好きなんだもん!
by kiki
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