パラノイア・エイジ「彷徨う翼~朝日に匂う山桜花~」
平成22年5月3日(月・祝)14:00~、下北沢「劇」小劇場にて。

作・演出/佐藤伸之

出演/
黒田三郎:佐藤伸之、黒田昭子(三郎の娘):木村望子
高宮:吉田匡孝、尾崎:小池秀典、加藤:長縄龍郎、相原:伊藤アルフ、細野:多田聡
有島食堂主人:秋場千鶴子、
女学校教師:みぎわ翔、女学生:海老原利奈、女学生・黒田の孫娘:井上ユリナ、

声のみ出演・・・飛行長:流野精四郎、記者:伊藤貴子

ゴールデンウィークに行われる下北沢公演では、「昭和の侍」に挑む
1989年1月、昭和天皇崩御と共に一つの時代が終わる。
だが其の時、未だ戦後を生きる者達が居た。
1945年8月、日本が降伏したあの時、抜き放たれた刃が、飛び立った翼が、全ての目的を失った。
生き残った者に未来を託し、戦いに身を投じて行った友たち。
死に場所を見失い生き残った男が、44年の彷徨の末に辿り着いたのは?
パラノイアが描く《神風特別攻撃隊》乞うご期待!(劇団公式HPより)


遅ればせながら、GWに観た舞台の感想を。

昭和天皇の御崩御により平成の世が始まろうとする頃の、平凡な父と娘の会話から物語は始まる。

1人暮らしをしている高齢の父のもとを訪れる娘。「何しに来たんだ」「娘なんだから、来るの当たり前でしょ」そんな会話を交わしながら、買ってきたどら焼きでお茶にしようとする様子がごく自然で。

そこにかかってきた1本の電話。それは、昭和天皇の崩御に際し、かつて戦争に赴いた世代の感想を聞こうとする若い女性記者からのものだった……。

父 黒田三郎は、かつてエースとして活躍した戦闘機乗りで、部下を救うために被弾し、片目と片肺を失ってからは、戦闘機の整備に携わっていた。

太平洋戦争末期。長引く戦況に日本は疲弊し、武器も生活用品も底をつこうとしていた。物量で劣る中、戦闘機1機で空母を沈めることのできる特攻隊にわずかな期待が寄せられていた……。

海軍特別攻撃隊 第二山桜隊に配属になった5人の若者。叩き上げで腕の立つ戦闘機乗りの尾崎。下町育ちで明るい加藤。学徒出身でどこかイラだったような相原。予科練出身でまだ幼さの残る細野。そして、エリート将校で冷静だけれど人情の機微もわきまえた隊長の高宮。

それぞれ個性的な若者たちの思いを丁寧に描いていくことで、美化するのでもない、批判するのでもない、ただ、そうしなければならなかった状況が痛々しく伝わってくる。

近くの食堂を切り盛りする心優しい未亡人や基地に手伝いに来る女学校の教師と生徒たちなどとの交流に心安らぐときもある。

しかし、空襲によってその女学生の1人が亡くなってしまい、彼女の友人が、形見となった人形を加藤に差し出す。それは、亡くなった少女が加藤のために作った特攻人形だった。そのとき、加藤は言う。「俺が戦う理由はこれです」と。

もうねぇ、これはズルいでしょう。いやホント、文章力がなくて伝わりにくいけれど、もうここは泣くしかなかったです。

なぜ飛ぶのか、なぜ戦うのか、死を前にして迷うものもいる。しかし、彼らは愛するものを守るための戦うしかなかった。ひと目ぼれして口説き落とした愛妻や亡くなった少女と同じ年頃の妹。『国』とは抽象的な何かじゃなく、そういう愛する人たちの暮らす場所なのだ……。

出撃命令。すでにまともな機体もなく、護衛もつかないまま、重い爆弾を積み、片道分の燃料だけを載せて、彼らは旅立つ。靖国神社の入口から2本目の桜。死後にそこで再会することを約束して。

かつて尾崎の上官だった黒田は、整備隊長として彼らの機体を整備する。そのときの自責の念を、44年経って娘に語る黒田。

昭和が終わった。天皇の崩御に際して、元軍人を中心に殉死者が出ていると、電話をかけてきた女性記者が言う。

気まずそうに娘が父を見る。そう、突然の訪問は、父が早まったことをしないかと不安を感じたためだったのだ

特攻隊の若者たちを中心に描きながら、けっして彼らを美化するのではなく。たとえば生き残った黒田や、その娘も精一杯生きていて。いかにも現代的なフリーターの黒田の孫娘さえ、祖父を案じて訪ねてくる思いやりを持っている。

その根底にあるものは、誰かを守るために戦おうとした戦時中の若者たちと同じなのだろう。空襲でなくなった女学生と孫娘が同じ役者さんだったので、 なおさらそう感じたのかもしれない。

観終わって、何かじんわりと胸に残るものがあった。平和な暮らしの中、多くの人たちが自ら死を選んだりもするこの時代。私たちの生きる意味、死ぬ意味について、そんなことを漠然と考えながら帰路についた。
[PR]
by kiki_002 | 2010-05-15 23:57 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://kiki002.exblog.jp/tb/13717792
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
だって、好きなんだもん!
by kiki
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
ブログパーツ
検索
画像一覧