ドラマティック・レビュー「うたかたのオペラ」
平成22年5月8日(土)17:00、日本青年館大ホールにて。

脚本・監修/横内謙介
音楽/加藤和彦
演出/菅原道則

出演/
紫吹 淳、舘形比呂一、馬場 徹、
鈴木 拡樹、KAZOO、大輔、M@A、荒川 智大、澪乃、せいら、谷 えりか、赤羽根沙苗

美しく妖しい歌姫と脱走兵が出会ったのは幻のレビュー小屋
夜毎繰り広げられる刹那の夢…
今宵も「うたかたのオペラ」の幕が開く

―― ある戦争が終わり、一人の若い兵士が連合軍に裁判を受けている―――
兵士は軍を脱走し、あるレビュー小屋で終戦を迎えていた。
裁判官は問う
「あの劇場には謎が多すぎる。あそこでは一体何が行われていたのだ?」
兵士は答える
「あそこで夜毎行われていたのは…それは…『うたかたのオペラ』でした…」
兵士は語り始める――。
『うたかたのオペラ』のすべてを……

戦時中の満州を思わせるかりそめの都の妖しげな裏通りに建つレビュー小屋「シャトー ド レーヴ」。
そこでは夜毎、美しき歌姫メイファを中心に華やかなレビューが繰り広げられていた。
一座には道化のドクトル・ケスラーをはじめ、一癖も二癖もある座員たちが顔をそろえる。
ある夜、そこへ一人の脱走兵が逃げ込んでくる。
宗一と名乗るその男はメイファにすがって「恋人に会えるまで死にたくない…」と訴える。
最初は「お涙頂戴のメロドラマなんか大嫌い」と言っていたメイファだが、
憲兵が宗一を出せと迫ると、宗一をにわか道化に仕立てて一座に紛れ込ませて匿ってやる。
こうして一座の座員となった宗一は、このレビュー小屋が、
この都の影の支配者アマカスがメイファのために建てた小屋と知る。
メイファは実はその大陸にあった王朝の末裔だったが、
王朝復古を願いそのために裏工作に手を染めていた――。
新帝国の崩壊が始まる…

すべてはうたかた、うたかたの中の夢物語……
(公式HPより)


これは、横内謙介さんの脚本・監修で、加藤和彦さんが音楽を担当され、昨年6月に大阪松竹で上演された舞台の再演であり、加藤和彦さんが80年代にリリースした同タイトルの伝説的アルバムをベースに描かれる、奇妙で美しい物語だ。

上記のあらすじにもあるとおり、1人の脱走兵が、満州の路地裏でもぐりこんだ奇妙なレビュー小屋と、そこで出会った美しい歌姫について語る形で物語は進む。

……っていうか、不用意なことに、ああ、そういえばこれはレビューだったんだ……と観始めてようやく気がつく。なにせ、数日前に横内さんのブログを読んで、突然行こうと思い立った舞台だ。下調べもほとんどしていない。

それも、ヒロインを演じる紫吹淳さんのためのレビュー。そう言い切ってしまって間違いではないだろう。客席を埋める観客も、圧倒的に彼女のファンが多いように見えた。

いやもちろん、舘形さんや馬場さん、その他のキャストのファンの方もいらっしゃっただろう。私のように横内さんの脚本に惹かれた方だって他にもいただろうし、加藤さんのファンの方だってたくさんいらっしゃったはずだ。

しかし、やはりこれは、紫吹さんのための舞台。なんとなくそう思った。

燕尾服・チャイナドレス・軍服、モダンなミニのドレスも、優美な白いドレスも、しっくりと着こなして、歌姫という役柄にふさわしく、歌もダンスもたっぷりと見せ場がある。

彼女の演じた歌姫メイファは、美しく気丈で、数奇な運命の中でも、顔を上げて進み続ける強さが感じられたように思う。

相手役の舘形さんもスラリとした長身で、ダンスも美しく声も良い上に、独特の妖しい雰囲気があって素敵だった。ザ・コンボイショウやつかこうへいさんの舞台でも拝見したことがあったが、1度見ると忘れられない印象的な方だ。

その舘形さんが演じたのは、レビュー小屋の支配人兼道化であるドクトルケスラーと新帝国を陰で操るアマカスの2役……というか、まあ同一人物だと最後にはわかるのだけれど。

燕尾服を着て、唇を赤く染め、皮肉な口調でレビューを盛り上げるドクトルケスラーと、要人の暗殺も表情ひとつ変えずに決断する権力者のアマカスと。どちらも魅力的だったけれど、特にドクトルケスラーが舘形さんの雰囲気に合って、よかったと思う。

脱走兵 宗一を演じた馬場さんの初々しい若者らしさも好感が持てたし、それ以外のレビュー小屋の仲間たちもそれぞれに魅力的で、セリフや芝居部分は少ないながらそれぞれに印象に残っている。

歌とダンスを中心に綴られる、耽美で退廃的で、そして少しせつない一夜の夢のような物語。いや、歌やダンスを中心にしながら、やはり横内さんならではの物語性があって、ヒロインの語る「ここでは、愚かなものが一番えらく、臆病なものが一番強い」という言葉が胸に残った。戦争や権力争いの中で、崇高でもなければ芸術的でもない、儚い一夜の夢のような歌や踊りが何よりも愛しい。そんなヒロインの思いに共鳴した。

…………ただ、横内さんが脚本ということもあり、扉座でやるならもうちょっと芝居部分を増やして、ドクトルケスラーを累央さんで、宗一を高木さんで……などとついつい夢想にふけっちゃったことは、内緒です。

とりあえず、この不思議な物語のもとになった、加藤さんのアルバム「うたかたのオペラ」を買ってこみようか……と思いながら家路についた。
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by KIKI_002 | 2010-05-16 23:54 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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