無花果の木がありました。
子どもの頃住んでいた小さな家には、木の塀に囲まれた小さな庭があって、そこには2本の大きな木が生えていた。

1本は夾竹桃(キョウチクトウ)。濃い緑の葉が繁り、季節になると鮮やかな桃色の花が咲いた。もう1本は無花果(イチジク)の木で、季節になるとたくさんの実をつけた。

無花果の木は地上1メートルくらいのところで二股に分かれていて、子どもが登るのには手頃だった。その分かれたところに登り、手が届く範囲のイチジクをせっせと採ったものだ。取りきれない実は鳥がついばみ、地上に落ちてしばらくは熟れた甘い匂いを放っていた。

スーパーに並んだイチジクは存外に高価で、それでもその果実を見かけるとついつい買ってきてしまう。記憶にある甘さと同じはずなのになぜか物足りなく感じてしまうのは、昔は採ったばかりの新鮮な実ばかり食べていたからか、あるいは、思い出の中ですっかり美化してしまっているからか。

イチジクを食べると、子どもの頃のことを思い出す。小さな家の縁側から見下ろす庭には、2本の大きな木と小さな犬が1匹。背後からは母がミシンをかける音が聴こえ、隣の部屋では祖母と弟の話し声が聴こえていた。

その家はとうになくなってしまったのに、そこにあった黒電話の番号だけ、いまも覚えている。
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by kiki_002 | 2010-09-22 22:45 | 飲んだり食べたり | Trackback | Comments(0)
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