『現代能楽集Ⅴ』
平成22年11月27日(土)19:00~、シアタートラムにて。

作/川村 毅
演出/倉持 裕
[出演/岡本健一、久世星佳、ベンガル、西田尚美、
小須田康人、玉置孝匡、粕谷吉洋、麻生絵里子、高尾祥子

能の持つ物語性や様式と現代演劇との融合を目指す「現代能楽集」。
当劇場芸術監督・野村萬斎が企画、監修し、毎回好評を博しているシリーズです。
第5弾となる今回は『春独丸』『俊寛さん』『愛の鼓動』と、3部構成でお送りします。
(劇場HPより)


美しいものを観た。

張り詰めた緊張感と高い身体性に裏付けられた物語。前衛でもなく、古典でもない、不思議な充足感。

まず最初に目に入ったのは、三方に客席を設けた正方形に近い舞台だった。能舞台を模しているのだと、そう気づくまでに数秒のタイムラグがあった。

橋がかりめいたものさえあって、もしかすると、このシリーズの定型なのかもしれない。

現実と夢が入り混じるような、緊張感に満ちた作品が2つ。それを繋ぐように、滑稽さと哀愁を感じさせる短い作品が1つ。

これも、能と能の間に狂言を置く能楽の上演形式を模しているのだろう。

最初の作品は『春独丸』。

久世星佳さんが演じる「女」は、老婆の姿と若々しい姿を行き来しつつ、物語を進行していく。岡本健一さんは、常人とは違う空気をまとって、春独丸のカリスマ性を体現していた。

目をつぶして子どもを捨てた女の罪悪感と執着。占い師からミュージシャン、政治家へと転身していく春独丸の鮮やかさと孤独。

お2人が舞台に立つと、切り取っておきたいような美しい景色が何度も立ち現れてくる

岡本さんは、盲目と足の不自由な身のこなしから、歌い、踊り、トリッキーな登場や退場など、見せ場が多く、観ていて楽しかった。

アンサンブルとして無言で物語の進行を補完していく群舞も美しかった。

『俊寛さん』では、狂言らしい台詞回しや動きなども取り入れつつ現代風の設定も交えて、最後には、やはり置き去りにされる俊寛の悲哀を、笑いに包んで表現していた。

そして最後の『愛の鼓動』。

モネの「睡蓮」に世界の真実を見る男と死刑囚との淡い交流。愛する人を幸せにする楽器。永い眠りから目覚めた娘。

雨の続く陰鬱な雰囲気から、睡蓮が浮かび上がってくるラストまで、さまざまなイメージが重なりつつ、しかもきちんと物語として立ち上がってきた。

古典でもない。前衛でもない。能楽のエッセンスを吸収しつつ、紡ぎ出された現代の物語。

美しい舞台を観た。そういう思いを抱いて、劇場を出た。
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by kiki_002 | 2010-11-27 23:56 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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