2010年に観た舞台の簡単なまとめ
2010年に観た中から、印象に残った舞台について。
ベスト10を選ぶほど多くの芝居を観ていないので、とりあえず5つの作品を観劇した順に。
昨年はとりわけ思い入れの強い作品が多く、客観的な判断とは言い難いかもしれないが、ここに挙げたそれぞれの作品が観た者を惹きつけるだけのチカラを持つものであることは確かだと思う。

☆ 2月 扉座「ドリル魂 YOKOHAMAガチンコ編」

前年から扉座及び横内氏の関連舞台に傾倒する中で、もっとも観たいと思っていた舞台がこれ。工事現場を舞台に、ニッカポッカにヘルメット姿、つるはしやドリルを持って踊る個性的な和製ミュージカル。劇団の貴重なレパートリーとして再演を重ねるこの作品について、横内氏をはじめとする劇団の方たちのブログ等を読んでいくと、一方ならぬ愛情が感じられる。

話題性のあるゲストを招いた今回のバージョンは、ショー的な要素を楽しむとともに、DVDで拝見した過去のバージョン以上に物語性が強まり、楽しみにしていた甲斐のある作品となっていた。

急な坂を上がった会場への道を、ワクワクしながら歩いた日々をいまもときおり懐かしく思い返す。


☆ 6月~ わらび座ミュージカル「アトム」

正直、タイトルを聞いただけでは観に行かなかっただろう作品。しかし、作・演出の横内氏や扉座から客演した岩本さんのブログを読むうちに、観に行こうと思ったのが運のつき(?)、自分でも、おかしいくらいにハマって、いつのまにか大切な作品となった。

2年間のロングランというのもこれまでにない体験で、これからまた1年あまり、この作品がどこへ向かうのか見届けたいと思ってたりする。


☆ 7月 椿版「天保十二年のシェイクスピア」

車の走る音が聞こえてくるような野外テントの中、むき出しの地面の上で躍動する大人数のキャスト。歌あり踊りあり、テンポよく進む物語は、いい意味で見世物的な熱気と猥雑さにあふれ、芝居というものの勢いが感じられた。

特に、テントが崩れて野外から民衆がなだれ込んでくるラストは圧巻だった。


☆ 7~8月 しゅうくりー夢「女探偵vs怪奇探偵~Case File:鬼~」

もっともフェイバリットな劇団、しゅうくりー夢の25周年記念作品。ファンにはお馴染みのキャラクターの競演というだけに留まらず、新たな登場人物の魅力とこの劇団らしく人を思う気持ちの切なさが胸を打つ作品となっていた。

加えて、ここ数年演出助手を務めてきた島田朋尚さんの初演出作品としても、大変印象に残るものとなった。


☆ 11月~12月 扉座「新浄瑠璃 朝右衛門」

夏に見た椿組にもやや共通する芝居の勢いに圧倒されるとともに、その中で細やかに描き出される、人の思いの切なさ、愛しさに涙した。

市民の参加や研究生の活躍も含め、いろんな意味で、劇団というものの持つチカラを改めて感じさせる作品となった。


個人的に選ぶなら上記5本だけれど、それ以外にも、挙げておきたい作品がいくつか。

まずは、若い創り手の意欲あふれるさまざまな企画に瞠目させられた。「Project BUNGAKU 太宰治」や「ZOKKY」、プロジェクトあまうめ穴埋め企画「よせあつめフェスタ」などに見る秀逸な企画力とそれを具現化する力量に感動した。特に、ZOKKYの「「NOT BACK 堀 PLAY」は、芝居って何?ということすら考えさせる、刺激的な体験となった。

豪華なキャストと、ミステリアスな設定から家族の物語に集約していく展開が印象的だった「黴菌」。

古典をベースにした寓話性の強い物語と、ある種の様式美に心惹かれた「現代能楽集Ⅴ」。

様式美といえば野村萬斎さんが主演した「マクベス」も、少人数のキャストによるシンプルで身体性の高い舞台が様式美を強く感じさせた。

同じく萬斎さんが主演した「ファウストの悲劇」は、キャスティングの妙に加え、演出の蜷川さんのサービス精神を感じさせてくれるいろいろな意味で贅沢な舞台だった。

その蜷川さんで言えば、「ガラスの仮面~2人のヘレン~」が、演劇を志す若者たちの情熱を瑞々しく描いた群像劇となっていて、前作に続きとても好きな作品となった。

ちなみに、昨年一番泣いたのはPEOPLE PURPLEの「ORANGE」。一番笑ったのは「取立てや お春」だったと思う。


印象に残った『人』について。

ここ数年、出演作品を追い続けている花組芝居の堀越涼さんは、いつもながら多彩な作品へさまざま役柄で出演なさっていて驚かされる。

本拠地で、正統派女形としての力量をしっかりと見せた「花たち女たち」では、10代から60代までの波乱に満ちた女性の一生を、年齢が上がるにしたがってしっとりとした色香を感じさせ好演。同じく本拠地での「ハイ・ライフ」や、年末のろりえ「女優(おんなやさしい)」なども印象に残った。

また、短編で、短期間の準備ながら、プロジェクトあまうめの.「あさはかな魂よ、慈悲深い雨となって彼女の髪を濡らせ」では、破天荒な言動の人物を、説得力のある演技で魅力的に観せてくれて、
個人的にはとても印象的な作品となった。

女性では、今年も柿喰う客のコロさん。柿喰う客の「露出狂」での思い切りのいい演技と、Project BUNGAKU 太宰治」の「人間失格」における不安定な表情に魅了された。

扉座の累央さんには、「ドリル魂」でのパワフルな演技とともに商業演劇でのコミカルでエキセントリックな役柄や年末の朗読劇でのこれまでにないタイプの役などで楽しませていただいた。

野村萬斎さんは、昨年は能・狂言より、「ファウストの悲劇」や「マクベス」などでのご活躍を中心に拝見した。伝統芸能、特に能楽の鑑賞回数が減った主な要因はここにあるのかもしれない。

そして、ミュージカル『アトム』では、繰り返し観た舞台だけに登場するキャストの多くに愛情を感じる中、特に全国公演で主人公トキオ役を演じている三重野葵さんの演技に若々しいのびやかさとある種の覚悟のようなものを感じて心惹かれた。


個人的な観劇記録とは離れるが、演劇関係において多くの方の訃報に接したことも昨年の大きな印象のひとつである。特に、その芝居にかつて大きな影響を受けたつかこうへい氏と、もっと多くの舞台を拝見したかったシテ方観世流能楽師 関根祥人師の訃報には、哀惜の念を禁じ得ない。


自分がなぜこんなに舞台に惹かれるのか。それは、生きた人間がそこにいるからだ、ということを昨年は特に強く感じた。

だからこそ、そのときその場所でしか観ることができないモノだし、同時に、亡くなった方々の思いを受け継ごうとすることも、またひとつの形であろうと思ったりもした。

そんな2010年。

そして、2011年は、どんな舞台を観ることができるのだろう。考えると、なんとなくドキドキしてしまう。
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by kiki_002 | 2011-01-05 23:57 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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