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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

「Guard of PRINCESS ~5人いるんだからなんとかなる!~」についての感想など

千秋楽から10日も経って、ようやく感想(というか覚え書き?)を。

劇団「しゅうくりー夢」、1年間かけて完結した『大正探偵怪奇譚』3部作の次の作品は、久々の新作ファンタジー。

作・演出/松田環

出演/
5人の騎士/アパッシオナート:横井伸明、ドルチェ:松田環、トランクィッロ:島田朋尚、ヴィーヴォ:宮田彩子、レジェロ:藤波瞬平、
王女アマービレ・グランディオーソ:岩井はるみ
王妃プリンラッテ:ありが薫、王妃の連れ子ラメンタービレ:山本育子、大臣スケルツァンド:家入賢仁、
賞金稼ぎの3兄弟/アラルガンド:更井孝行、ラレンタンド:原田治、リタルダンド:興松克之、
柴山直樹、青木拓也、山田直人、吉利和人、黒川英和、
市川藍、宇山未来、鈴木香織、

今回の役名は、音楽用語でまとめられている。
音の響きだけでなく、キャラクターのイメージと音楽用語の意味がある程度リンクさせてあるようだ。音楽に詳しい人は、名前だけでもキャラクターのイメージがつかめるんだろうか?
個人的には、カタカナに弱いのか、メインの5人とプラス2~3人しか覚えられない(泣)。
まあ、観ていて不自由を感じなかったから、それで充分、というとにしておこう。

キーパーソンが2人。

1人目は王女アマービレ・グランディオーソ。
父王を毒殺した濡れ衣を着せられ、金貨5千枚の賞金首となっている。
一見、天然で世間知らずなお姫様だが、高貴なものの負うべき義務をわきまえていることがしだいにわかってくる。

彼女に王殺しの濡れ衣を着せたのは、アマービレの継母である王妃プリンラッテ。
王である夫の死後、自分と連れ子の行く末を案じるあまり、、「地の果ての魔女」と契約を交わそうとする。魔女が誰かの望みを叶えると契約が成立し、魔女が本当に復活することになる。
そのとき、この世界は滅ぶのだという。
王妃の願いは自分の娘、ラメンタービレが王位を継ぐこと。

そのために邪魔なアマービレを亡き者にしようとする。
雇われた凄腕の賞金稼ぎ3兄弟。この3人の登場するシーンが可笑しい。
大臣スケルツァンドとのやりとりには、ホント笑った。

この3兄弟の長男アラルガンドが、もうひとりのキーパーソン。
おそろしく腕が立つ賞金稼ぎなのだが、どこか愛嬌があり憎めない。

で、5人の騎士。

まず始めは、王宮の騎士トランクィッロ。
姫が魔女に襲われているところにたまたま通りかかり、そのまま姫を助けて逃げてきた。
一生懸命やっているようなのに、なんとなく頼りない。
あまり強くないので、いろいろと「戦略」を考えるが、仲間からは「せこい」と言われてしまう。

旅の中で徐々に集まってくる仲間。このあたり、ファンタジー、というより典型的なおとぎ話のスタイル、そのなかで、登場人物のそれぞれの事情、それぞれの思いがちゃんと伝わってくる。

アパッシオ。めっぽう腕の立つ彼を見込んで、アマービレが護衛を頼む。
子どものように純真で前向き。自分が正しいと信じたことだけやる男。
彼の持ち歩く巨大な剣と合わせて、アニメ「ワンピース」とかに出てきそうなキャラ。

ヴィーヴォ、身寄りのない少年。
姫にかけられた賞金が目当てで近づくが失敗。姫に優しくされて忠誠を誓う。
ホントにアニメに出てきてもおかしくないようなかわいい少年だが、実はけっこうしたたか。

ドルチェ、セクシーな女賞金稼ぎ。腕利きの狙撃手。
王宮から差し向けられた刺客だったはずが、アパッシオに惚れて仲間になる。
素直になれない感じがかえって可愛いツンデレ(?)キャラ。

レジェロ、世界の守を司る月明かりの魔女の使い。
地の果ての魔女を封印するため東の国から来た。
よくとおる響きのある声。切れのいい動き。生まれつき皮肉屋だというクールな言動。

が、彼が疾風のように舞台を去ると、必ずあっというまにまた舞台上に戻ってきてしまう。
……極端な方向音痴なのだ。しかし、本人はそれを認めず、魔女が結界を張ったのだと言い張る。彼の言動がシリアスになればなるほど、このギャップがおかしい。

そのレジェロが言う。魔女を封印するためには王族の血が必要であり、姫の胸に短刀を突き立てるしかないのだ、と。
実は、姫は最初からそのことを知っており、すでに死ぬ覚悟を決めている。

だが、アパッシオが言う。ほかに封印する方法がないのなら、魔女を倒せばいい。
このときのアパッシオは、とてもカッコいい。
トランクィッロ、ヴィーヴォ、ドルチェもその言葉にうなずき、魔女を倒そうと誓い合う。

けれどその直後、アパッシオが、幼い時から探していた仇と出会ってしまう。
奴を殺すためだけに生きてきた、とこれまでのポジティブさとそぐわない暗い顔。

この仇が2人目のキーパーソン、アラルガンド。実は、仇ではなくアパッシオの父親。

彼を追うアパッシオ。バラバラになる仲間。

自分もあきらめて立ち去ろうとするトランクィッロに、独りじゃない、一緒にお姫様を助けに行こう、と言うヴィーヴォ。
自分たちが無力なのはわかっている。でも、やらなきゃいけない。独りじゃないから……。

死ぬかもしれないんだぞ、というトランに、まっすぐな笑顔で「うん」と答えるヴィーヴォ。

このシーンはとても好きだ。
千秋楽にこのシーンを観ていたら、思わず目が潤んだ。……すでに3回も観てるというのに。

戴冠式の日、姫と5人の騎士が結局はそれぞれ城へとやってくる。
しかし魔女の力は強く、王妃の願いがかないそうになる。

が!ここで王妃の連れ子、第2王女ラメンタービレが、王冠を跳ね除ける。
「いりません!魔女の力を借りてまで王になんかなりたくありません。優しかったお母様を帰しなさい」
わがままなお嬢様の彼女がここでとてもカッコいい。
みんないろいろ考えて生きていて、それぞれに大事なことがあるんだよなぁ、などと思う。

契約が成立しなかったため王妃の身体をあきらめ、別の契約者を探す「地の果ての魔女」。
それを追うアパッシオたち。
そのときアパッシオがレジェロに声をかける。
仲間じゃん。手、貸してくれよ。
それまでは、魔女を封印しようとするレジェロと姫を殺させたくない4人が対立していたのに
この場面で笑顔でレジェロを見るみんなの表情がいい。

ようやく見つけ出した魔女は、アラルガンドに取り付こうとしていた。
彼の望みは息子であるアパッシオの手にかかって死ぬこと。その望みが叶い、地の果ての魔女が甦ったかに見えたが……。

この後のアラルガンドがとてもいい。
おれの望みはかなっちゃいねぇ。おれはあいつに倒されたんじゃねぇ倒されてやったんだ。
そう言って、取り付いた魔女もろとも王宮の塔から身を投げ出す……。

ラストシーン。魔女は滅び、それぞれの道を行く5人の騎士たち。
だが、助けが必要なときには、必ずまたみんなが集まるだろう。仲間だから。

たくさんのダンス、たくさんの立ち回り、個性的な登場人物のキャラや会話の面白さで見せるたくさんの笑い。そして、人を思う気持ち。

どこか遠い国へ旅をしてきたような充足感のある2時間だった。
by kiki_002 | 2007-08-24 23:56 | 舞台