伊坂幸太郎著 『グラスホッパー』
「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。気づけば飛びバッタ、だ」

ミステリー、というか、いろいろなタイプの殺し屋が出てくる殺し屋小説(?)。

亡き妻の復讐のために『非合法』な会社にもぐりこんだ『オヒトヨシ』の元教師の鈴木。
「人は誰でも、死にたがっている」といい、相手を自殺させる自殺屋の鯨。
『一家惨殺』が得意なナイフ使い、蝉。

こう書くとなんだか陰惨だが、軽妙な語り口ですすめられる物語は、けっして重苦しくはない。
この3人の視点が交代しながら物語が進み、いつの間にか3人とも押し屋(人を車や列車の前に突き飛ばす殺し屋)を追い始め、3つの物語が交差していく。

これまでに5冊ほどこの作家の本を読んだが、ハズレなく面白かった。特に、『ラッシュライフ』は時間軸のずれた複数の物語が、最後にひとつに収束していくようすに快感を覚えた。

この作品も、複数の視点で語られるのに、すんなり読ませるだけの吸引力がある。

なにより印象的なのは、奇妙で魅力的な登場人物の数々だ。
語り手の3人を始め、それぞれをとりまく依頼主や被害者や殺し屋業界(?)の人々。

たとえば、小説と名のつくものはたった一冊だけしか読んだことのない鯨。その一冊、『罪と罰』を破けて読めなくなるまで繰り返し読み、読めなくなると買い換えてすでに5冊目。

たとえば、蝉に殺しを斡旋する岩西は、正体不明のあるミュージシャンの言葉の引用ばかり口にする。

たとえば、押し屋と思われる男、槿(あさがお)は、チャーミングな妻とサッカーの上手な小学生と昆虫シールを集める幼児とともに暮らしているが……。

あるいは「やるしかないじゃない」が口癖だった鈴木の死んだ妻。鈴木とはホテルの朝食バイキングで知り合ったらしい。

主要な登場人物以外にも、たくさんの興味深いキャラクターが登場し、それぞれの主張やそれぞれの生き方が見えてくる。

人間は多すぎるのか、人はみな死にたがっているのか。それともそうではないのか。この本の帯にかかれた「死んでるみたいに生きたくない」という言葉の意味。読み終わったあと、それに気がつく。人間はバッタより少しはまし、なのかもしれない。後味のいいラスト。

この作家の本をまた読んでみたい、と思った。
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by kiki_002 | 2007-09-20 22:54 | | Trackback | Comments(0)
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