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by kiki

彩の国シェイクスピア・シリーズ第18弾「オセロー」

平成19年10月8日(月・祝)13:00~、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて。

作/W. シェイクスピア
翻訳/松岡和子
演出/蜷川幸雄

出演/オセロー:吉田鋼太郎、デズデモーナ:蒼井優、イアゴー:高橋洋、エミリア:馬渕英俚可
ロダリーゴー:鈴木豊、キャシオー:山口馬木也、ブランバンジョー:壤晴彦

オセローといえば、オセロゲームの名前の由来となったことでも有名だ。白と黒、表と裏、真実と偽り、男と女。舞台は16世紀のヴェニス。高潔で有能な黒人将軍オセローが、部下イアゴーの言葉に欺かれ、若く美しい妻デズデモーナと副官キャシオーと仲を疑い、嫉妬に狂っていく悲劇である。

オセロー役の吉田鋼太郎さんは、それまでシンプルに人を愛し、人を信じて生きてきた無骨で生真面目な軍人が、若く美しい妻をあまりにも愛し過ぎたために悲劇へ向かっていく様子を、壮絶に演じていた。

情熱とそれゆえの苦悩が抑えきれないように舞台中を動き回り、階段を駆け上がり、駆け下り、倒れ、のたうち、叫ぶ。そして、ラストに愛するデズデモーナを手にかけるときの崇高ですらある激情。まさしく悲劇だと感じさせられた。

蒼井優さんの演じるデズデモーナは、初々しい美しさと真摯さが感じられて好印象だった。特にラストの白い寝巻き姿で夫と対峙する彼女の無垢な幼子のような清らかさと、死に際にさえ夫をかばう女の悲しさが、気高く美しかった。

そして、個人的に言えば、もうなんていっても高橋洋さん演じるイアゴーだ。

イアゴーといえば、卑劣な姦計を弄するイヤなやつだと思っていた。まあ、これは『オセロー』をずいぶん昔に読んだきりだったからかもしれない。他の舞台でもそれほど単純なばかりの悪役ではないのだろうが、それにしても、今日のイアゴーは魅力的過ぎた。

忠実で正直な部下の顔や、いかにも誠実そうな好青年の顔、そして独白のときの憎しみにあふれた顔など、いろいろな顔を見せながら、そのどれもが印象的だった。

なぜ彼はあれほどの憎しみをオセローにキャシオーに、そして世界に抱いていたのだろう。オセローを陥れることになぜあれほどの情熱を注いだのだろう。

副官になれなかったから?自分の妻エミリアとオセローやキャシオーの仲を疑っていたから?
そういう説明はあっても、見ているうちにそれだけでは説明しきれないように思えてくる。すでに彼自身が、悪意に引きずられ、狂気に駆られていたのだろうか。

終盤、オセローの崇高なまでの嘆きとデズデモーナの死を前にして、卑小に見えるはずのイアゴーなのに、彼が「俺はひと言も口をきかない」という声はなぜあんな凛々しかったのだろう。

このイアゴーを演じた高橋洋さんを、また舞台で観たいと思った。次は『リア王』だろうか。

そういえば、開演前にロビーで次回作『リア王』のチケットを販売していた。いま思うと、購入してこなかったのが悔やまれる。

彩の国シェイクスピア・シリーズ第18弾「オセロー」_f0140491_22382262.jpg

by kiki_002 | 2007-10-08 22:50 | 舞台