「東京DOLL」
石田衣良さんの本で最初に読んだのは、「波のうえの魔術師」だった。面白かった。読み始めてすぐに引き込まれてしまうだけの勢いがあった。それ以来、この作者の書いた本をときどき手に取るようになった。

「東京DOLL」は恋愛小説だという。MG、つまりマスター・オブ・ゲームと呼ばれる天才的なゲーム制作者と、彼が次回作のモデルに選んだ背中に翼のタトゥを持つ少女ヨリの関係を中心に物語が進んでいく。その恋と平行して、MGとその仲間たちの小さなゲーム制作会社とそれを飲み込もうとする大企業との攻防が描かれる。

どことなく既視感があるのは、以前読んだ「アキハバラ@DEEP」に似た部分があるからだろう。もっとも「アキハバラ@DEEP」はビジネスの部分にウエイトが置かれていたのに対して、この作品ではビジネス部分はあくまで恋愛小説の味付け的な扱いに過ぎない。

また本作でも、この作者らしく、東京の細部が魅力的に描かれている。六本木や汐留、浅草や秋葉原、その他さまざまな場所で、ヨリに向かってシャッターをきるMG。深夜の東京の街角が、どことなくSFに登場する未来都市ででもあるかのようだ。

華やかなファッションや流行のスポット、2004年の東京の姿が鮮やかに切り取られ、不思議に魅力的に描かれている。

しかしこの本は、タイトルが示すような自分の手の中の人形に恋する男の物語ではなかった。男性が読むとまた違う印象を持つのだろうか?少なくとも私には、ヨリが人形だとは思えなかった。確かに、MGもヨリ自身も、ヨリをMGの人形だと呼ぶセリフはあるのだけれど、人形と呼ぶには、ヨリは最初から意思的過ぎた。いくらMGが与えた高価な服を身につけ、MGの言うがままにポーズをとっても、この恋を動かしているのは、MGではなくヨリの方だ。

魅力的なディティールと比べると、主人公の孤独やそれを癒してくれる少女への思いに共感しきれなかったためだろうか、物語の終わりに少し物足りなさを感じてしまった。
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by kiki_002 | 2008-01-26 23:04 | | Trackback | Comments(0)
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