キリンバズウカ 『飛ぶ痛み』
平成20年4月27日15:00~、王子小劇場にて。

脚本・演出/登米裕一

出演/久保貫太郎(クロムモリブデン)、七味まゆ味(柿喰う客)
田中沙織(柿喰う客)、黒岩三佳(あひるなんちゃら)
本井博之(コマツ企画)、齋藤陽介(ひょっとこ乱舞)
折原アキラ、佐藤みゆき(こゆび侍)
緒方晋(TheStoneAge)、板倉チヒロ(クロムモリブデン)

客席に座って手元のチラシを見たとき、この劇団についても今回の作品についても、まったく予習せずに観に来てしまったことに気がついて愕然とした。

「柿喰う客」から客演されている七味まゆ味さん目当てに行ったのだが、これが「関西の秘密兵器」と呼ばれているらしいキリンバズウカの東京旗揚げ公演だということや、七味さんと同じ「柿喰う客」から制作の田中沙織さんも客演されていることなどをその時点で知る。いいのか、こんなことで?まっ、いいか。とにかく面白かったんだから。

小さな島にある病院のような施設。そこには、患者…ではなくモニターと呼ばれる3人の余命いくばくもない病人と、院長を筆頭に一癖も二癖もありそうなスタッフ数名が生活している。奇妙な状況とどこか調子ハズレの登場人物たち。

そこへ新たに到着した若い医師、高島。彼が加わることで、ぬるいバランスを保っていたその小さなコミュニティでの人間関係が崩壊していく。

そして、「痛みを飛ばす」というそのひとつの設定が生み出す、観ているこちらまで痛みを感じさせるような切実な思いの数々。

自分の痛みを誰かが代わって受け取るとしたら。誰にその苦痛を飛ばすことができるのだろう?愛する人の痛みを見ていたら、代われるものなら代わってあげたいと思うだろうか?

観ているうちにしだいに明らかになるその設定とそれにまつわる登場人物の思い。どの場面も、目を離せない。

キャストもみな説得力のある演技で、舞台の緊張感を持続させていたように思う。中でも今回は女性陣の演技が印象に残った。

モニター(患者)の一人である岡村を演じていた黒岩三佳さん。クールに見えていた彼女の同じモニターの死に対する反応や「本当に強かったらここにはいない」という言葉に共感し、胸が痛んだ。

キーパーソンの鶴ちゃんを演じているのは、「柿喰う客」の田中沙織さん。「柿喰う客」では劇団のマスコットであるめこちゃんのコスチュームでおなじみの田中さんだが、彼女が演じる鶴ちゃんのおとなしい謝ってばかりいるようすがカワイくもいじらしい。同時に、他の女性が彼女に対して感じる苛立ちにも共鳴していくのは、観ているこちらも女性だからだろうか。

七味さんの演じる円上の、「仕事ですから」という平凡な言葉。その言葉で自分たちのやっていることへの疑問も不信も棚上げして、淡々とシステムを継続させようとする円上がけっこう怖い。苦痛も死も仕事として処理していこうとするそのニコヤカな笑顔が、観ているうちにだんだん不気味に感じられてくる。

冒頭と終盤で印象的な演技を見せる佐藤みゆきさん。それまでの奇妙に高いテンションと恋人の死後、静かに語る様子のギャップがなんともいえずいい。

すべての謎がすっきりしたわけではないラストに、奇妙な余韻を感じながら帰路についた。いやあ、あの後彼らはいったいどうなったんだろう?……気になる。
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by kiki_002 | 2008-04-27 22:07 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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