「わが魂は輝く水なり-源平北越流誌-」2回目
平成20年5月11日(日)、14:00~。Bunkamuraシアターコクーンにて。
2度目の「わが魂は輝く水なり-源平北越流誌-」。

一週間前にこの芝居の初日を観て以来、頭のどこかでいつもこの芝居のことを考えていたような気がする。

そしてようやく迎えた2度目の今日、確かにセリフやストーリーは前より理解しやすかった気がする。

それでも……。正直に言えば、一度目に観たときの方が気持ちよかった。そう、前回は何か不思議な心地よさを抱えて帰路に着いたものだ。良いものを観た、何かとてつもなく美しいものを観た、そんなふうに思えて。

それぞれの場面には同じように引き込まれながらも、今日は少し考え過ぎてしまったのだろうか?前回の印象を確かめるように観ていたのだろうか?だから、最初ほど純粋に物語にのめり込むことができなかったのかもしれない。

菊之助さんの美しさも萬斎さんの凛々しさも、決して記憶を裏切るものではなかったのだけれど。

今回印象に残ったのは、巴と兼光兼平の中原兄弟だった。

改めて観ると、巴が実盛を慕っていることが前よりいっそう強く感じられた。最初に出会ったときから、実盛と巴は惹かれあっていたのだろうか?若く美しく、そして強くてしなやかな巴を、実盛も憎からず思いながら、平家への忠義のため、あるいは義仲やその仲間たちやそこへ組する五郎への意地のため、巴と離れ、山を降りて行く。

一方、死人の目を恐れて、殺すたびにその目をえぐっていた兼光、木曾へ帰ろうと何度も何度も口にする兼光、彼の狂気がしだいに明らかになっていく。それとともに、非情で冷静な軍師という印象だった兼平さえ、狂気の波に飲まれていく。

実盛は澄んだ魂を持ち続けていたのだろうか?あるいは、澄んでいるままに彼もまた正気と狂気、現実を夢の合間を彷徨っていたのだろうか?

彼だけに見える息子五郎の亡霊。巴との夢。老いた彼の心にとって、現実よりも大切なものがあるように見える。そして、彼は死に場所を探す。

主君や息子六郎のいる本隊を無事に京へ向けて逃すため、あれほど憧れていた森の国の人々と戦うために、わずかな手勢を連れて、森へ。

だが、巴を指導者とする敵は、彼を殺さず生きて捕らえようとしていた。それを知った実盛は、白髪を染め白粉を塗り、自らの老いを隠そうとする。敵に自分であると気づかれないようにするために。

白粉を塗るシーンでの五郎と実盛のやり取りのせつなさ。そして、実盛が死者である息子に向かって、生きている者としての思いを語る部分の静けさが心に沁みた。

敵兵に『化け物』と呼ばれて、実盛は「わしの本性を言い当てた」と言う。彼はなぜ、自分のことを化け物だと思ったのだろうか。

変わりたくないと嘆く巴。木曾へ帰りたいと言う兼光。ひたすらに京を目指す兼平。ただ実盛の静けさだけが、この森に深い余韻を残していたような気がした。
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by kiki_002 | 2008-05-11 22:22 | 舞台 | Trackback | Comments(2)
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Commented by kiko at 2008-05-12 22:01 x
>心地よさを抱え帰途に着いた・・私も同じでした。観終わった時、森の中を渡る清らかな風と水の音を感じ気持ち良かったです。正直、私は最初の感動を大切にしたく、ほんとうは何回も観たいのに一回でガマンすることが多いです・・・。友人は「骨までしゃぶりたい(笑)」と毎日通います。これもちょっとコワイですね(笑)それにしてもkikiさんの感想には引き込まれます!ひとつ気になった事ですが、白髪を染めた訳はkikiさんの感想のとおりですが、蜷川さんは「ラジカリズムに走った青年の集団の熱い想いを理解し、自分も若返り彼らの戦いに向かう」と言ってます。もう一度、同じ青年になりたい心も含ませているいるのかしら?蜷川さんもご自分と重ねているようですね。それにしても台詞の意味などいろいろ感動させられる舞台ですね。萬斎さんも40歳を過ぎ老いを意識しつつ美しい実盛を演じてましたね。kikiさんまた観られるんですね。あ~やっぱり、もう一度観たい・・・(笑)
Commented by kiki_002 at 2008-05-13 00:15
kikoさまのおっしゃるとおり、実盛が髪を染めたとき、若さへの憧れはあっただろうと、私にも思えました。その場面で、巴に「2人なら昔に帰れる」と言われたと五郎に話してましたが、晴れ晴れと子どものように笑う実盛の心は瑞々しく澄んで、若者たちとの戦いに向かう喜びさえ感じられる気がしました。
この芝居に対して、蜷川さんはいろいろな思いを抱いてらっしゃるのでしょう。
今度は二階席ですので、全体をじっくり見渡して来たいと思います。
だって、好きなんだもん!
by kiki
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