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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

柿喰う客『俺を縛れ!』についての追記

もうさあ、いい加減切り替えようとは思うんだけど。

でもまあ、次の土曜日に「五右衛門ロック」を観るまで観劇の予定はないし、テレビはなんだか平坦に見えてしまって面白くないし、本を読むだけの集中力が復活しないし。

いま繰り返し読んでいるのは、この前観てきた劇団「柿喰う客」の芝居『俺を縛れ!』の台本。要するに、この舞台のインパクトからまだ抜けられないでいるのだ。

たとえば、独特のリズムのセリフが脳内でリフレインしてしまったり。「待ちなさい忠光」「待ちます忠光」とか、「ほめる」「ほめられる」とか、「あるのかしらないのかしら」とか、「通りすがりのゾンビです」とか。

役者たちのキレのある動きが、いまさらながら目に浮かんだり。(そういえばこれ、DVDとかつくらないのかな)

ふと思ったのは、もしや私は『リチャード三世』が好きなのか?ということ。ちょうど去年の今頃は、『リチャード三世』を翻案した『国盗人』に夢中だったし。この『俺を縛れ!』の江戸城へ攻め込む理由を言葉にしていくあたりの雰囲気に『リチャード三世』を思い出したりしたので。

いやまあ、そんなことはどうでもいいのだが、その『リチャード三世』の独白を思わせるような、戦う理由をつくっていく場面がとても好きだ。古くから仕えていた人のいい家老を犠牲にし、その仇を討つために攻め込むのだ、と言おうとして、一瞬、考える主人公。誰かの復讐のために戦う、というより、自分のために戦う理由が欲しい、俺は天下を取るために戦うのだとする、このあたりがすごく面白い。

ここまできても彼の執着しているのは、戦いそのものではなく「裏切り大名」としてのキャラクターだ、というところがまずおかしい。ここでの演技がシリアスであればあるほど、絶妙な違和感が残って、この話の(意図された)不安定さがハッキリしてくる。

台本を読んでいると、軽いアドリブのように思えたセリフのひとつひとつが、キチンと計算されたものであることがわかってくる。フィクションであることを強調するかのような、時代劇という「縛り」からワザと外した、たくさんの時事ネタ。芝居がかったところと、まるで素のように見えるところのバランス。考えているうちに、最初はやや疑問に思ったラストが、いまではこれしかない、とさえ思えてくるから不思議だ。

その芝居を活かして行くのは、役者たちの勢いとキレだ。

先日の感想で書いた堀越涼さんや玉置玲央さんだけでなく、コロさんのちょっととぼけたコミカルな役柄(でも立ち回りはカッコいい)とか、上意に従うあまり死ぬことになる七味まゆ味さんの上手さ(いやあの瀕死の様子!)とか、村上誠基さんのインパクトの強いキャラ作りとか、佐藤みゆきさんのカッコよさとか、佐野 功さんのスゴイ殺陣とゆるいギャグの落差とか、語り始めるとキリがないので詳しくは書かない。(単なる手抜きともいう)

もうこの「柿喰う客」、これから先も目が離せないじゃないか。
by kiki_002 | 2008-07-05 23:57 | 舞台