東京ネジ第10回公演『みみ』
平成20年7月12日(土)20:00~、アトリエヘリコプターにて。

作/佐々木なふみ
演出/佐々木香与子

出演/
みみみ(草居雲子):佐々木なふみ
女王様(少女時代のみみみ):佐々木富貴子  
芹沢光一郎(フリーライター):窪田道聡(世界名作小劇場)
福原均(ベンチャー企業の会長):堀越涼(花組芝居)
福原和歌(均の妻):両角葉
守川愛(福原の元恋人):中村真季子
宇佐見マリ(福原の秘書):太田みち
乾忠男(福原の運転手)・犬:大塚秀記
乾いちる(忠男の娘):清水那保(DULL-COLORED POP)
森春行(福原の部下、いちるの恋人):印宮伸二(劇団神馬)

えっと、昨日観た順序とは逆になるけれど、まずは東京ネジの「みみ」。

会場は五反田駅を降りて、キャッツシアターの前を通り過ぎ、ローソンの角を曲がった先。劇団のブログを頼りにたどりついたそこは、元は工場だったらしい。そのためか、なんとなくセットめいた不思議な雰囲気のロビーを抜けて階段を上ると、100席ほどの客席と向き合う、思ったよりゆったりした空間のステージ。

耳かきを仕事にしているヒロイン みみみ。その仕事を取材に来たフリーライターの芹沢は、彼女の繊細でやや不安定なキレイさに惹かれていく。手さぐりのように少しずつ、彼女のことを知ろうとする芹沢とみみみとの会話。交差していく過去の場面。みみみの少女時代の幻が犬を連れて、失くした耳を探している。

耳が不自由だという彼女に、膝枕で耳掃除をしてもらいながら客はいろいろな思いを吐き出していく。彼女が聴こえないことに安心して。

平行して描かれる、一人の男。若くして成功した福原は、美しい妻に優しい言葉をかけながら、次々と別の女性との恋愛を続けていく。

キャスト表に説明を書いてみたら、どうもほとんどの人間関係がこの福原を中心に整理できそうなのだけれど、その割に登場している場面はそれほど多くない。しかし、彼を巡って、いろいろな女性の思いが交差しながらストーリーが進んでいく。

積み上げられていくシーンによって、しだいにみみみが心と耳を閉ざしている理由がわかってくる。

小学生時代の初恋の人に似ていた福原との恋愛。いや、彼女や他の女性にとっては恋愛でも、男にとっては最初から浮気にしか過ぎない。みみみと福原の場面で感じさせる男の身勝手さ。悪気のないふりをする、ずるい男。でも、こういう男って、いそうだよ~~。柔らかな口調や物腰が、かえってどこか冷たさを感じさせるところなんか、もういかにも。

全体に女性の目線で描かれてるなぁ、と思うのは、こういうところ。男性はどちらかというと類型的な描き方をされていて、4人とも「あ、いるよね、こういう人」って思える。

たとえば、乾忠男がポケットから飴を出して、「はいアメちゃん」と人にあげる感じとか、妻の不在を忘れたように「お母さん!」と呼んでしまう様子とか。こういうお父さん、いかにもいそうな気がするでしょ?

一方、女性の登場人物の描き方は、ものすごくリアルで辛辣だ。特に、福原の妻 和歌のじっとりとした怒りは、観ていて怖くなってしまう。

それをあおるように、情報を集めてくる福原の秘書 宇佐見のしたたかさ。わかっててやってるだろう、あんた!と思わせる憎たらしさがうまい。

それから、福原の会社の社員(で、その時点ではみみみの同僚)で福原の元恋人、守川という役も説得力があった。なんとなく、親しい友人の恋の悩みを聞いてるみたいな気がしてくる。そうしたら、絶対言ってやるのに。そんな男、早くやめた方がいいって。だからこそ、彼女がみみみに電話をしながら自殺するシーンに胸が痛むのだろう。

しかもそのとき、福原はみみみの部屋にいたのだから。みみみは、守川からの電話を受けながら、抱き寄せる男の動きの優美さに抗えないでいたのだから。

そのため、ある朝突然、耳が聞こえなくなったとき、みみみは思うのだ。これは、わたし自身のせいだと。罰だと。

そんなみみみの心を開いていく芹沢の誠実さと優しさ。みみみが自分の過去と向き合うとき、それは悲しみやつらさだけでなく、楽しいことやいとおしいこともたくさんあったはずだと言う芹沢の大きさは、ある意味女性にとっての理想かも。この2人の関係は、見ていて応援したくなってしまう。

それから、セーラー服を着たストーカー美少女いちると調子のいいサラリーマン森の関係が、最後に逆転していくところも観ていて気持ちいい。相手の言葉と思いを、ちゃんと聴いていなかったのは、誰だったのか。ずっと会話が噛み合っていなかったのは誰のせいだったのか。何も考えていないように見えて、女の子は本当はいろいろ思っているんだよ。と、いう感じが好き。

繊細にやわらかく積み上げられてく物語の中には、考えるとけっこうダークなところもあるのだけれど、みみみの少女時代を演じる佐々木富貴子さんの透明な声が、物語を幻想的なイメージにまとめている。

誰かを好きになることの怖さと、それでもやっぱり素敵なことなのだというときめきと。ちょっとビターなチョコレートのような物語。
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by kiki_002 | 2008-07-13 10:48 | 舞台 | Trackback | Comments(4)
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Commented by MABO紫 at 2008-07-13 17:29 x
こんにちわ(^-^)無事に見に行ってこられたんですね!楽しく読ませていただきました。見れるまであと3日・・ますます楽しみになってきました♪
Commented by kiki_002 at 2008-07-13 20:18
MABO紫さん、こんばんは!ひと足お先に、行ってきました~~♪
不思議な、柔らかな雰囲気の舞台でした。これからご覧になるんですよね。楽しんできてくださいね!
Commented by 東京ネジ at 2008-07-14 09:40 x
このたびはご来場ありがとうございました。
「みみ」ブログにリンクを貼らせていただきました。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
Commented by kiki_002 at 2008-07-15 01:16
東京ネジさま
リンクについて、了解しました。丁重なご連絡、ありがとうございました。
だって、好きなんだもん!
by kiki
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