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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

タカハ劇団納涼番外企画公演「ボクコネ~ボクはテクノカットよりコネチカット~」

平成20年8月17日(日)17:00~、駅前劇場にて。この日は、新橋演舞場で「幕末純情伝」を観た後、下北沢へ移動。

脚本・演出/高羽彩

出演/板垣:西尾友樹、
日野:異儀田夏葉、萬屋:森戸宏明(動物電気)、
山田:川島潤哉(コマツ企画)、佐藤:鈴木麻美(北京蝶々)、
大家さん(ゆずちゃん):田中沙織(柿喰う客)、
宇宙少女:酒井杏菜(メタリック農家)

開場してまもなく劇場に入る。そういえばこの駅前劇場には、つい先日しゅうくりー夢の夏公演を観るために通ったばかり。

当然のことながら、あのときとはまったく違う舞台が目の前にある。舞台上にあるセットは、こじんまりしたアパートの一室。男性の一人暮らしのようだ。灯りは消えているが、テレビと扇風機はついたまま。

……え…?

気がつくとベッドの上に、人が寝ている。しかもときおり、寝返りを打ったりしている。うわぁ、もう始まってるんだ……と思って、ちょっと緊張する。

テレビに映っているのは、外国映画。劇中でも話題となる「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」といううスウェーデン映画だ。帰ることのできない人工衛星に乗せられたライカ犬、それと比べれば自分の人生はマシだと自分を慰める少年。そういう映画。

そのアパートの一室から、物語は始まる。住んでいる男は板垣。押しかけてくる同じアパートの住人たち、日野と萬屋。けっこう気の置けない関係のようだ。日野は失恋したばかり。萬屋はオーディションに落ちたところ。そして、板垣は引きこもり中。

ベルマークで家賃を割引してくれるぼけ始めた大家のおばあちゃん。いや、すでに幼い女の子に戻ってしまったゆずちゃん。そして、ゆずちゃんにしか見えない、奇妙な衣装の宇宙少女(?)。

そこへ、現れるスーツ姿の男と女。かみ合わない会話の末に判明したのは……。ベルマークを集めて、宇宙に行こうキャンペーンに当選し、すでにアパートごと宇宙船に乗って出発した、ということ。しかも、板垣の部屋の窓から見える地球が、突然真っ二つになる。

あまりにあっさりした地球の滅亡。いやぁ、もう先の展開が全然読めない。少人数で、台詞で見せていく芝居だけに、かえって何でもありな気がする。

登場人物の誰もが、あまりにもリアルな人間で、たとえば誰かを待ち続けているゆずちゃんの孤独。戻ってきてしまった何通もの手紙。それを読む板垣の声が潤む。

宇宙とか、地球の滅亡とか、そんな状況とはあまりにもそぐわない、小市民的なリアクションの数々。しかし状況は煮詰まり始め、嫌気が差した板垣は自分の殻に逃げ込んでしまう。

ふと気がついてみると、すでに周りの人間は殺しあったりキノコになったり(!)という取り返しのつかない状況になっていた。ここで冷凍睡眠に入ろうとする、板垣の眠りは一種の逃避だ。長い眠りについて、目覚めたところでもう誰もいないというのに。

誰かが押さなくてはならないスイッチ。それを押すゆずちゃんの無垢と。押させる板垣の絶望と。

ときに滑稽なまでにリアルで、しかも吹っ飛んだ設定の、一番最後に残るのは、(幻かもしれない)宇宙少女と並んで星を見上げるゆずちゃんの無垢な笑顔。真っ暗な場内に星の光が、客席の上にまでも輝く。
by kiki_002 | 2008-08-18 22:38 | 舞台