「落下する緑」
著者:田中啓文
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
発行:2008年7月11日

この著者の書いた「ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺」というミステリーを以前読んだことがある。いまどきの不良少年がひょんなことから噺家の弟子になって、落語の世界でいろいろな事件に遭遇する……というような話だった。

こんどの主人公は、打って変わってジャズバンドのテナーサックス奏者だ。世間知らずというか、音楽以外のことには関心を持たない天才肌のミュージシャンが、さまざまな謎を鮮やかに解き明かすミステリーの短編集。表題作同様、色の名前を含んだ7つの短編に、それぞれの参考レコードについて書かれたページがついてくる。

主人公の永見緋太郎は、鋭い感性と洞察力を持っているものの、世間の常識などにはあまり頓着していないキャラクター。語り手の唐島英治のバンドのメンバーであるため、音楽の世界を舞台にした短編も多いけれど、絵画や文学などを題材にした作品もあり、表現することにこだわった連作という印象もある。

中でも「揺れる黄色」という短編が好きだ。犯罪の内容もトリックも、最後にひとつの結論に向かって収束していく。そして、その結論を突きつけるのは、大切なものを奪われたはずの被害者だというところがけっこう気に入っている。

それ以外の作品も、それぞれ趣向が凝らされていて楽しい。

音楽…それもジャズを題材にしていて、私などのようにジャズに詳しくなくても、なんとなくイメージがわくのはさすがだと思うが、ジャズの好きな方ならもっと楽しめただろうと思うとちょっと残念な気がする。そういう作品だった。
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by kiki_002 | 2008-10-23 23:52 | | Trackback | Comments(0)
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