加藤健一事務所vol.70 音楽劇「詩人の恋」
平成20年10月25日(土)17:00~、紀伊国屋サザンシアターにて。

作/ジョン・マランス
訳/小田島恒志
訳詩/岩谷時子
演出/久世龍之介

出演/マシュカン教授:加藤健一、スティーブン:畠中洋

2003年、2006年、そして今年と再演を重ねた名作。

スランプに陥って弾けなくなってしまった若いピアニスト スティーブン。有名なピアノの教授に教えを請うため、ウィーンへ。しかし、まずは声楽の伴奏を学ぶように言われ、しかも伴奏の前に、歌い手の気持ちを理解するため声楽を学べと言われて、嫌々ながらマシュカンの元へ通い始めるのだが……。

カリフォルニア育ちの若いピアニストとウィーンで暮らす老いた声楽教師と。すれ違っても、言い争っても、教授は笑いながらコーヒーを勧める。

古い建物を古いままに、合理化という名でその美しさや優美さを剥ぎ取らないこの国。しかし、スティーブンがダッサウの強制収容所を見て感じたこの国の偽り。それを受け入れ、笑い、しかし決して幸福ではないマシュカン。止まったままの時計。

ダッサウから戻って以来、決してドイツ語は話さないと、母国語で歌うスティーブン。そして、明らかになるマシュカンの過去。

ピアニストは、音楽を愛する心を取り戻し、自分たち民族の歴史を誇りに思い、圧制を受けた記憶を忘れまいとする。二度とそれを繰り返さないように。

年齢も境遇も違う2人が、ぶつかり合いすれ違いながら、しだいに心を通わせていく。

軽やかに、ときにコミカルに、しかし、しだいに重いテーマを描き出しながら、なおもしっとりと優しく。派手さはないものの、バランスの取れた美しい物語。

……余談だけれど、1幕でマシュカンがスティーブンを指導する様子が、第九合唱団の練習で先生がおっしゃることとそっくりだったことや、加藤さんの台詞ひとつひとつに感じた深い響きが、なんとも声楽の教授らしく感じられたことなどが、なんとなくうれしかったりもした。

珠玉の、という形容詞を使ってみたいような、そんな舞台だった。
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by kiki_002 | 2008-10-27 23:04 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
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