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「七胴落とし」
著者:神林長平
出版社: 早川書房 (ハヤカワ文庫)
発売日: 1983/02

で、SF好きなら言わずと知れた、神林長平氏の初期の傑作。

子どもが大人になるとき、それまで持っていた感応力を失ってしまう……。主人公の少年 三日月は、19歳の誕生日をまもなく迎えようとしていた。そろそろ「大人」になってしまう日も近いはずだ。でも、この力を失うなんて耐えられない。焦燥に駆られる三日月と、一足先に大人になっていった友人や力を使った危険なゲームを楽しむ同級生の少女、謎の転校生、などが繰り広げるある夏の不安定な物語。

一見、現実離れした設定が、読み進むにつれて説得力を持ち始める。少年少女たちの不安定な心と彼らの持つ不思議な力。まるで、抜き身の日本刀のようにギラギラして、触れるものを破壊せずにはいられない。

そう、この風変わりなタイトルは、主人公の祖父が収集していた日本刀のうちのひとつ「七胴落とし」を差している。7人の身体を重ねて断ち切るほどの禍々しい刃物と、主人公の少年の危うさが、しだいに交差し始める。

どちらかといえば重く息苦しい物語である。瑞々しい青春の繊細さ、などではなく、人を切るために造られた日本刀の重い輝きと似た危険な若さ。彼らの混沌と多くの死と、そしてどれほど拒否しても、やはり少年は大人にならないわけにはいかない、ということの悲劇性。

それでも読後感は決して悪くない、と思う。

ああ、こういうSFもあるんだなぁ、と思いながら、読み出したら一息に読んでしまった。
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by kiki_002 | 2008-04-30 23:51 | | Trackback | Comments(0)
DVD 「FRIED DRAGON FISH」
脚本・監督/岩井俊二
出演/プー・リンウォン:芳本美代子、ナツロウ:浅野忠信
探偵:酒井敏也、トビヤマ:HIROSHI OHGUCHI
キリュウ:光石研、セールスマン:田口トモロヲ、配送業者:山崎一

これは、1993年に関西テレビ深夜ドラマ枠「La cuisine(ラ・キュイジーヌ)」の最終話として放送され、後に劇場公開された作品らしい。50分という短い時間なのだが、それを感じさせない充分な濃いイメージが詰め込まれている。

冴えない探偵の事務所へパソコンデータベースのインストラクターとしてやってきた女 プー。探偵と彼女が、一千万円の価値を持つかもしれないドラゴンフィッシュという魚を探すうちに、彼女は謎の少年ナツロウと出会う。

だだっ広い殺風景な部屋。そこで、たくさんの水槽と熱帯魚たちに囲まれて暮らすナツロウ。この部屋に次々と送り込まれる殺し屋たち。ナツロウの退屈しのぎのゲーム。

去り際にプーのもとにドラゴンフィッシュを届けるナツロウ。これが欲しかったんだろ、そう言って彼女に近づく。殺すのか、くちづけするのか、と息を呑んでみていたのだが、どちらもせずに窓から立ち去って行く。ゴメン、海見れなくなっちゃった、と言い残して、非情なテロリストではなく純情な少年の顔で。

浅野忠信さん、20歳くらいか。冷酷なのか無邪気なのかわからない、あやうい感じが印象的だった。オレは死ぬなら食べられて死にたい…なんていうセリフに、ゾクゾクしてしまったり、自分がライオンに喰い殺されるところを語る様子が妙に色っぽかったり。

この話はたぶん、芳本美代子さんと浅野忠信さんが魅力的でないと成立しないんだなぁ。

ちょっとコミカルなオチも洒落ているし、エンディングにかかる曲、Charaさんの「Break These Chain」がまたいい。もう一度じっくり、見返してみようかと思う。
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by kiki_002 | 2008-04-29 19:16 | 映像 | Trackback | Comments(0)
「僕は旅をする」
2008年4月28日(月)21:00~、フジテレビにて。

2001年1月1日に放送された「『世にも奇妙な物語』SMAPの特別編」が、ストーリーテラーであるタモリさんの登場部分を収録し直して、再放送された。いつのまにか、もう7年も経ったんだなぁ。こうして見ると、SMAPのメンバーがそれぞれやっぱり若い、と思う。

で、その中の一編である「僕は旅をする」。

主演の稲垣吾郎さんが、列車事故で亡くなった(?)姉の旅路をたどる弟を演じている。今市子さんのマンガを原作に、佐藤嗣麻子さんが脚本と演出を担当した作品。

そういえば、これで私は今市子さんを知ったのだった。もっとも、原作とドラマとは少し設定が違う。原作では事故で亡くなるのは弟で、その弟の跡を追って旅するのが姉だったのだが。

秋の金沢や日本海の浜辺に立つ稲垣さんがなんとも絵になる。姉の役の桜井幸子さんもとても綺麗で、この姉と弟が向き合うと、ほんのりと妖しい雰囲気が漂う。 しっとりと美しい映像で、不思議な物語が語られていく。

ラスト。結末を知っているはずなのに、黒いボストンバッグを開こうとする弟の手元を、息を飲んで見つめてしまった。悲しかったり、怖かったりしてもいいはずの話なのに、なぜか見終わった後、温かいものが胸に残る。久しぶりに見たけれど、やっぱりとても好きなドラマだった。
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by kiki_002 | 2008-04-28 23:43 | 映像 | Trackback | Comments(0)
キリンバズウカ 『飛ぶ痛み』
平成20年4月27日15:00~、王子小劇場にて。

脚本・演出/登米裕一

出演/久保貫太郎(クロムモリブデン)、七味まゆ味(柿喰う客)
田中沙織(柿喰う客)、黒岩三佳(あひるなんちゃら)
本井博之(コマツ企画)、齋藤陽介(ひょっとこ乱舞)
折原アキラ、佐藤みゆき(こゆび侍)
緒方晋(TheStoneAge)、板倉チヒロ(クロムモリブデン)

客席に座って手元のチラシを見たとき、この劇団についても今回の作品についても、まったく予習せずに観に来てしまったことに気がついて愕然とした。

「柿喰う客」から客演されている七味まゆ味さん目当てに行ったのだが、これが「関西の秘密兵器」と呼ばれているらしいキリンバズウカの東京旗揚げ公演だということや、七味さんと同じ「柿喰う客」から制作の田中沙織さんも客演されていることなどをその時点で知る。いいのか、こんなことで?まっ、いいか。とにかく面白かったんだから。

小さな島にある病院のような施設。そこには、患者…ではなくモニターと呼ばれる3人の余命いくばくもない病人と、院長を筆頭に一癖も二癖もありそうなスタッフ数名が生活している。奇妙な状況とどこか調子ハズレの登場人物たち。

そこへ新たに到着した若い医師、高島。彼が加わることで、ぬるいバランスを保っていたその小さなコミュニティでの人間関係が崩壊していく。

そして、「痛みを飛ばす」というそのひとつの設定が生み出す、観ているこちらまで痛みを感じさせるような切実な思いの数々。

自分の痛みを誰かが代わって受け取るとしたら。誰にその苦痛を飛ばすことができるのだろう?愛する人の痛みを見ていたら、代われるものなら代わってあげたいと思うだろうか?

観ているうちにしだいに明らかになるその設定とそれにまつわる登場人物の思い。どの場面も、目を離せない。

キャストもみな説得力のある演技で、舞台の緊張感を持続させていたように思う。中でも今回は女性陣の演技が印象に残った。

モニター(患者)の一人である岡村を演じていた黒岩三佳さん。クールに見えていた彼女の同じモニターの死に対する反応や「本当に強かったらここにはいない」という言葉に共感し、胸が痛んだ。

キーパーソンの鶴ちゃんを演じているのは、「柿喰う客」の田中沙織さん。「柿喰う客」では劇団のマスコットであるめこちゃんのコスチュームでおなじみの田中さんだが、彼女が演じる鶴ちゃんのおとなしい謝ってばかりいるようすがカワイくもいじらしい。同時に、他の女性が彼女に対して感じる苛立ちにも共鳴していくのは、観ているこちらも女性だからだろうか。

七味さんの演じる円上の、「仕事ですから」という平凡な言葉。その言葉で自分たちのやっていることへの疑問も不信も棚上げして、淡々とシステムを継続させようとする円上がけっこう怖い。苦痛も死も仕事として処理していこうとするそのニコヤカな笑顔が、観ているうちにだんだん不気味に感じられてくる。

冒頭と終盤で印象的な演技を見せる佐藤みゆきさん。それまでの奇妙に高いテンションと恋人の死後、静かに語る様子のギャップがなんともいえずいい。

すべての謎がすっきりしたわけではないラストに、奇妙な余韻を感じながら帰路についた。いやあ、あの後彼らはいったいどうなったんだろう?……気になる。
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by kiki_002 | 2008-04-27 22:07 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
ネットショッピング
深夜のネットショッピングは危険だ。気がつくとつい衝動買いをしてしまっている。

何か探しているものがあるわけでもない。ただなんとなく見ていたはずなのに、いつのまにか購入のボタンをクリックしてしまっている。そのときはそれが必要な気がするのだけれど、翌朝、目覚めてちょっと愕然とすることもある。

今月に入って、すでに靴を3足。それも仕事に履いていけそうもないカジュアルなものばかり。さすがに自分の理性を疑ってしまう。

まあ衝動買いが多いのは、ネットショッピングに限らないけど。ちょっと病気……かも?
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by kiki_002 | 2008-04-26 22:03 | 日々のこと | Trackback | Comments(2)
MANSAI◎解体新書
今年の4月、野村萬斎氏は世田谷パブリックシアターの芸術監督として2期目を迎えた。

この劇場での萬斎氏の取り組みのひとつ「MANSAI◎解体新書」は、各界で幅広く活躍される芸術家や学識経験者と、そして萬斎氏自身が、舞台上で向き合い、表現に対する考えや方法論をトークとパフォーマンスを通して観客に伝えようとする試みだ。

この本では、2002年の12月に行われた「その壱」から、今年の1月11日の「その拾弐」まで、世田谷パブリックシアターで開催された「MANSAI◎解体新書」の記録を文章と写真で読むことができる。

その他、萬斎氏の芸術監督としての思いを語った第1部も興味深い。彼の思う舞台芸術とはなにか、伝統と革新、日本と世界、彼のなじんできた三間四方の世界、などについて語られたこのパートは、その内容ももちろんだけれど、ごく普通の服装で劇場の事務室らしき場所や三軒茶屋の駅などにいる彼の写真が、なんだか妙に新鮮で素敵だった。(いつもながらミーハーなことでお恥ずかしい)

去年からのにわかファンではあるし、地方在住でもあるので、「MANSAI◎解体新書」を拝見したことはないのだが、せめてDVDを買って見ようか、とは思ったりもしている。でも一度に全部は無理なので、どれがおすすめかご存知の方は教えてください。
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by kiki_002 | 2008-04-25 23:58 | | Trackback | Comments(0)
ゴールデンウィーク
もうすぐ、ゴールデンウィーク。別に旅行の予定もないし、始まってしまえばアッという間に終わってしまうのだろうけれど、やっぱりなんとなく楽しみな気がする。

暖かくなってきて、外へ出かけたいような季節のせいだろうか?

あるいは、新年度でドタバタした疲れなどが、ここでいったんリセットされる気がするからだろうか?

遠出の予定はないが、最近ご無沙汰だった観劇の予定はいくつかあるし。ドライブがてら、どこかにおいしいものを食べに行ったりしてもいいかもしれない。

あわただしい日常からほんの数日切り離される、それだけでなんとなくウキウキする。
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by kiki_002 | 2008-04-24 23:50 | 日々のこと | Trackback | Comments(2)
古いカレンダー
今日、知り合いに2005年の卓上カレンダーをもらった。今年は、2008年……なんだけど。3年も前のカレンダーなんてもらっても仕方ないだろう、と言われそうだが、実はとてもうれしかった。THE ALFEEのファンクラブ限定(?)のカレンダーだったので。

パラパラとめくって見ると、特に3月のところに載っている高見沢さんのお写真が!!いやあ、綺麗~~。そりゃあ、写真の撮り方もあるだろうけれど、50代男性がこんなに可憐でいいのか、という風情で写っている。王子というより、もうこれは姫としか呼べない……(爆)。

その知人も当然THE ALFEEのファンなのだか、なぜ今日突然これをくれたのかは謎だ。
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by kiki_002 | 2008-04-23 23:53 | 日々のこと | Trackback | Comments(0)
「ゆらぎの森のシエラ」
著者:菅 浩江
出版社:東京創元社(創元SF文庫)
発売日: 2007/03

最近、本の話題が続く。目先を変えて昨日のスマスマ特番「SMAP×SMAP 名曲歌謡祭」の話でもしようか、とも思ったのだけれど。なにしろ、TMネットワーク・米米クラブ・爆風スランプ、そして、バービーボーイズ!!という豪華ラインナップだったし。

と、いいながら、ついついまたSFの話をしてしまうのは、いったいどうしてなんだか。

この作品、異形の生き物たちの徘徊する霧に閉ざされた森や記憶を失った戦士、紫の瞳を持つ少女、犬の顔とコウモリの翼を持つ女神、巨大な神の像を操ろうとする企み、そして、あらゆる生き物の形を操ることのできる創造主という名の強大な敵、などの多くの魅力的なパーツを積み上げて、一見典型的なファンタジーにも見える。

しかし、読み進むうちに、これはファンタジーというよりバイオSFなのだということに気がつく。

まあ、そういうジャンル分けはともかく、この物語の持つ美しく妖しいいくつものイメージを堪能しているうちに、不思議な世界の中を歩む主人公の運命から目が離せなくなる。
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by kiki_002 | 2008-04-22 23:40 | | Trackback | Comments(0)
「幻詩狩り」
著者:川又千秋
出版社: 東京創元社 (創元SF文庫)
発売日: 2007/05

いや、発売日は去年の5月ってなってるけど、最初に出版されたのは1984年。もうまぎれもない、日本SFの名作のひとつだ。

ありえない力を持つ言葉。それを“見つけた”のは、戦後間もないパリに住む無名の若き天才フー・メイだった。彼の紡いだ言葉が、人々を別な次元へと連れ去って行く……。パリで、現代の日本で、そして遠い未来の火星で。人々を侵食していくその言葉と、それを消し去ろうと戦う男たち。圧倒的な迫力で進んでいく物語に、引き込まれずにはいられない。

面白かった。余計な感想なんて必要ない。この奇妙な物語の持つ力に、ただ身をゆだねればいい。
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by kiki_002 | 2008-04-21 22:49 | | Trackback | Comments(0)
  
だって、好きなんだもん!
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