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わらび座ミュージカル『アトム』
平成22年6月19日(土)14:00~、新宿文化センターにて。

原案/手塚 治虫
脚本・演出/横内 謙介
作曲/甲斐 正人
振付/ラッキィ池田、彩木 エリ

出演/
トキオ:良知 真次(東宝芸能)
マリア:五十嵐 可絵(東宝芸能)
スーラ:速水 けんたろう(ホワイト・キャンパス)

神楽坂町子:椿 千代
アズリ:(ダブルキャスト):三重野 葵、柳瀬 亮輔(フリー)
エミ:碓井 涼子
タケ:岩本 達郎(劇団扉座)
ダッタン:宮本 昌明
時計じいさん:岡村 雄三
チルチル/クロキ:千葉 真琴
シアン:森下 彰夫
ヨッツン:瀧田 和彦(フリー)
ウメ:小林 すず
チータン:神谷 あすみ
ヘレン:工藤 純子
ジュリー:山口 貴久子
ロップ:鳥潟 知沙
ベイリー:(ダブルキャスト) 柳瀬 亮輔(フリー)、三重野 葵
クロキの手下:上土井 敦(劇団扉座)、串間 保彦(劇団扉座)

20××年、十万馬力のロボット「アトム」の時代は終わり、
さらに進化したヒト型ロボットが、パワーを大きく制限され、
人間への絶対服従を強いられている時代。
路地裏の倉庫では、ロボットだけの秘密のパーティーが開かれていた。
元科学者・神楽坂町子の屋敷で働くトキオと、親友のアズリが創った歌は、
自由を持たないロボットたちに生きる喜びを生んでいた。
そこに人間の若者たちが紛れ込んでくる。
工場で働くタケとエミ、親に未来を決め付けられて苦しむマリア。
「私たちだってロボット!」
人間とロボットの叫びは心を結びつける。
やがてマリアとアズリに愛が芽生える。
しかし、それを許さない人間の力と暴力によって、アズリは殺される。

復讐を叫ぶロボット達に、元科学者のスーラが「殺人兵器として十万馬力のアトムを甦らせるのだよ」と煽る。
アトムを密かに預かっていた神楽坂町子は、「暴力で何かを解決した事があったか」と、トキオを諭す。

そして、トキオに隠された秘密が明かされる。
アトムは甦るのか―、トキオの決断は―。
(公式HPより)

あの国民的アニメをミュージカルで……と聞いて、いったいどんな舞台になるんだろうと正直やや不安に思っていたが、結論から言えば、本当に素敵な作品となっていた。

誰もが知っている『鉄腕アトム』を、愛と勇気の象徴として、ウエストサイドストーリーのような対立と愛の物語を歌とダンスで綴っていく。

横内謙介氏のハートウォーミングなストーリーとラッキィ池田氏による楽しくて力強いダンス、甲斐正人氏の親しみやすく美しい楽曲、そして役者陣の安定感のある演技や歌によって、シンプルなテーマが胸に迫るミュージカルとなっていたと思う。

特に印象に残ったのは、主人公トキオの親友であるアズリを演じた三重野葵さんだ。

明るいトキオとは対照的に、控えめな優しさの中に芯の強さを感じさせるアズリ。彼には夢があった。しかしそれは、決して叶うことのない夢。アズリの静かな口調から滲み出る憧れの強さと、その夢が決して叶わないのだという絶望とを感じさせる演技。

そんな彼が、1人の人間の女性と愛し合ったことで、無残にも叩き壊されてしまう。この場面の重さが、後半のロボットたちの行為に説得力を与えていく。

叩き壊すのは、工場から逃げ出してきた貧しい人間タケ。相手がロボットなら殺人って訳じゃないしな、そいうつぶやく彼も悪人ではなく、その時代の常識や偏見に縛られてしまう平凡で弱い人間なのだった。

この難しい役を、扉座から客演の岩本達郎さんが、程よい人間味と憎たらしさ、そして、絶妙な軽さで演じていた。

それから、御茶の水博士の最後の弟子である神楽坂博士を演じた椿千代さん!クールな雰囲気から、しだいにその熱い思いを感じさせる演技。そして、その歌声。この方の他の芝居も観てみたくなった。

主人公のトキオを演じた良知さんは、明るい前向きさを感じさせて爽やかだったし、アズリと恋に落ちる女性マリア役の五十嵐さんは、可愛らしさと共に強さを感じさせてくれた。

愛する人を失ったマリアが、ただ嘆くのではなく、アズリとの短い出会いから勇気を受け取って、前に進もうとする場面が泣けた。

また速水けんたろうさんが、ドクタースーラという悪役を演じていたのは意外だったけれど、企みも恨み言も大人の雰囲気で渋く演じてらした。

気負いもてらいもなく、まっすぐなメッセージを歌とダンスに乗せて表現する舞台。あまり舞台を観たことのない若い方たちも、いろいろと凝った仕掛けのある舞台を見慣れた大人も、きっと楽しむことのできる、そういう舞台だったように思う。

新宿と兵庫以外では三重野さんがトキオを演じているそうなので、どこか地方公演に駆けつけて、そのバージョンを拝見しようかな、といま目論んでいるところだ。
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by kiki_002 | 2010-06-27 22:16 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
プロジェクトあまうめ穴埋め企画「よせあつめフェスタ」
平成22年6月13日(日)16:00~、新宿シアターミラクルにて。

脚本/関村俊介(あひるなんちゃら)、三谷麻里子、櫻井智也(MCR)

演出/関村俊介(あひるなんちゃら)

出演者/
1.「ツイッター」
岡安慶子(北京蝶々)、三原一太(はらぺこペンギン!)

2.「明日バイトなんだけど」
堀雄貴(犬と串)、さいとう篤史

3.「ゴテンノーベ」
菊地奈緒(elePHANTMoon)、本山紗奈(荒川チョモランマ)、
湯舟すぴか(市ヶ谷アウトレットスクウェア)

4.「隅に置く」
石井舞、西恭一(The Soul Beat Ave.)、松木美路子(風琴工房)

5.「あさはかな魂よ、慈悲深い雨となって彼女の髪を濡らせ」
筧晋之介(エレクトリック・モンキー・パレード)、寺井義貴(ブルドッキングヘッドロック)、
堀越涼(花組芝居)

6.「赤い石」
堀川炎(世田谷シルク)、金丸慎太郎(国道五十八号戦線)

MC/オケタニイクロウ(オケラジ!)

舞台監督/喜久田吉蔵
照明/元吉庸泰(エムキチビート/虚構の劇団)
音響/影山直文(sons wo:)
音響協力/岡田 悠(One-Space)
楽曲提供/綱島慎平
動画作成/岡安慶子(北京蝶々)
HP作成/堀川炎(世田谷シルク)
制作・宣伝美術/池田智哉(feblabo)
制作/橋美和(少年社中)、佐藤成行、吉田高志、
小林大陸(Aga-risk Entertainment)、大木瞳(ガレキの太鼓)
票券管理/津留崎夏子(ブルドッキングヘッドロック)
演出助手/早坂彩、詩森ろば(風琴工房)

製作総指揮/松本隆志(Mrs.fictions)


突然キャンセルの出た小劇場。その支配人がツイッターでつぶやきいたことから始まり、たった2週間弱の準備期間で、90分の舞台を3公演!

企画の立ち上げから、キャストやスタッフが集まる様子、準備やチケットの売れ行きまで、ツイッターで追いかけながら迎えた公演日には、もう観に行くだけで楽しい気分になれた。

しかも、MCによる映像を使った前説で笑わせるなどイベントっぽいユルさを残したまま、芝居自体は、しっかりと完成度の高いものとなっていて、満足度高し。

当日パンフには、#anaumeのハッシュタグでつぶやいた人々のアカウントが乗ってたり、いろいろと細やかな気配りで、観客もしっかり楽しめた大人の文化祭。

6つの短編がそれぞれ楽しめる出来栄えながら、個人的には、5番目に上演された「あさはかな魂よ……」が印象的。

最近結婚して、すぐに別れて、でもその元妻をいまも愛している主人公。彼女は重い病で死に瀕している。

突然バンドをやろう!と言い出したのは、病床の彼女の心を癒すため。でも、自分は歌上手くないからコーラスね、という彼。

別れた理由は彼の浮気。それも、彼女の入院している病院の看護婦さんと。「もてちゃうのは、しょうがないだろ」みたいな能天気さと、「でも、それで彼女に優しくできる」というやや本音の感じと。

あるいは、薬の副作用で髪が抜けていく彼女の病室で、副作用の強さは薬が効いてるからと思って陽気に振舞ってしまい、人生で5本の指に入る勢いで怒られたり。

悲劇的な状況と、破天荒な登場人物の言動とのギャップが笑いを生みつつ、哀愁と愛しさを感じさせる。

笑いながらせつなく、しかも、それが重くなり過ぎない感じが心地よくて。

この主人公役を堀越涼さんに、と決めた演出氏の慧眼にひたすら感謝。

それから、4番目の「隅に置く」。

姉と妹の会話の自然さとおかしさ。メールで「死んでしまえ!」と送る姉妹喧嘩の本気な憎たらしさがステキ。

少しだけ登場する兄さんの冷静さがまたおかしくて。

時間や空間の制約からか、会話劇がほとんどだけれど、それぞれ違った面白さやよさがあり、今回始めて拝見した役者さんについても、またどこかで拝見できればいいなと思ったりした。

終演後、五円玉を取り替えていく「御縁作り」というイベントも楽しく、この企画に観客として参加できたことをうれしく思いながら帰途についた。
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by kiki_002 | 2010-06-27 00:58 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
水木英昭プロデュースvol.10[復活5周年記念公演]『眠れぬ夜の1×8レクイエム』
平成22年6月12日(土)19:00~、紀伊國屋ホールにて。

脚本・演出/水木英昭

出演/
宮本大誠、青柳塁斗
曾我泰久
保田圭
小松彩夏

相澤一成
竹匠
原育美
佐藤浩之

大橋光
ひとし
松田沙希
阿部未来

島口哲朗(剱伎衆かむゐ)
福田高士(剱伎衆かむゐ)

水木英昭 他

【手に汗にぎる、笑いです。】

大好評“眠れぬ夜”シリーズ第10弾にして最終章は、警察コメディ!
今回も、各界から強力メンバーが大集結し、
独創的エンターテイメント・ヒューマン・コメディーの決定版をお送りする!(公式HPより)


他近未来の(?)特殊警察ネイキッドポリス。本庁からのエリートたちと、実力を買われたたたき上げチームとが、一緒に参加した研修の奇妙な成り行き。

エリートとたたき上げチームの対立による緊張の中、1人また1人と消えていく隊員たち。

たっぷりの小ネタに笑いながら、しだいにハラハラして、どうなるんだろう~~~と手に汗握りながら観ていた。

現実と非現実が交互に描かれ、現実もしだいに現実感を失っていく様子に緊迫感があった。ラスト近くの種明かしでホッとした後、またドキッとさせるエンディングはけっこう好み。

もちろん今回もアクションたっぷりで、キレのいい動きを堪能。特に、剱伎衆かむゐのお2人の立ち回りに息を飲んだ。
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by kiki_002 | 2010-06-26 23:51 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
ある訃報……
観世流シテ方の関根祥人さんが、急性大動脈解離により6月22日に亡くなられた…ということを、今日知った。

最初に聞いたとき、何かの間違いじゃないか、と思った。50歳という年齢も、その芸も、まだ死という言葉とは縁遠いもののように感じられたから。

そういえば、つい10日ほど前に上海で舞台を務められたばかりだという。

昨年の5月に拝見した三代による『石橋』のスケールと力強さを感じさせる獅子の迫力や、9月に観た『鵺』のしなやかな美しさ、そして面の向こうから響く深みのあるあの声。

いまとなっては、もう2度とその姿を観ることは叶わないのだ……。平凡な言い草だけれど、ああ、本当に惜しい方が逝ってしまった…と、そんなふうに思う。

心から、ご冥福をお祈り申し上げます。
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by kiki_002 | 2010-06-24 23:59 | 日々のこと | Trackback | Comments(0)
T.K.JUMP『ドレッサー』
平成22年6月12日(土)13:00~、吉祥寺シアターにて。

脚本/ロナルド・ハーウッド
翻訳/松岡和子
演出/大谷亮介

出演/
座長・リア王:渡辺哲、ノーマン(付き人):小宮孝泰、
マッジ(舞台監督):大西多摩恵、オクセンビー・エドマンド:勝矢、
アイリーン・お小姓山本育子、ジェフリー・道化:大谷亮介、
劇団員・リーガン:桐山京、劇団員・グロスター:飯嶋啓介、
劇団員・コンウォール:川崎誠一郎、劇団員・ケント:あいだしんご、
夫人・コーディリア:久世星佳

第二次世界大戦中の最中、英国のシェイクスピア劇団で繰り広げられる滑稽で愛しい物語。
わがままな座長を、付き人ノーマンは舞台に立たせることが出来るのか?
脚本に惚れ込んだ小宮孝泰と、シェイクスピア好きの渡辺哲による初の共同プロデュース!
(オフィス・RENホームページより)


20年前にこの「ドレッサー」を観て、ぜひノーマン役をやりたいと考えていた小宮孝泰さんが、渡辺哲さんにお声をかけたのが、今回の公演の始まりとなったらしい。

お2人を中心に、名作戯曲を力のあるメンバーでじっくり見せる舞台。特に主役の小宮さんは、自ら惚れ込んだ役だけあって、とても役の雰囲気にあっていたように思う。

一方、渡辺哲さんは、迫力と愛嬌を兼ね備えた演技で、座長を魅力的に演じていた。

久世星佳さんの座長の妻の美しく凛々しい様子や舞台監督を演じた大西多摩恵さんの抑えた思いが微かに見え隠れする様子、山本育子さんが新人女優を初々しくしたたかに演じる様子など、女優陣も魅力的だった。

自分を見失ったまま登場した座長が、舞台の始まりに向けてしだいに自分を取り戻すまでの可笑しくて、同時に緊張感に満ちたやり取り。鏡の前でリア王のメイクをしていく場面では、実際には鏡ではなく客席に向かってメイクをしていく様子を息を飲んで見つめていた。

劇中劇のクライマックスである嵐の場面も、本当に印象的で、特に、非協力的だった劇団員が、舞台上の盛り上がりに思わず効果音を手伝う様子に思わず感動した。

それらの背景には戦争があり、旅の劇団の上にも暗い影を落としている。何度も笑って、笑いながらハラハラし、そしてどこかもの哀しい、そういう物語。

観終わってみると、永年この舞台のノーマンを演じたいと願ってきた小宮さんの気持ちが、少しだけわかるような気がした。
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by kiki_002 | 2010-06-24 00:46 | 舞台 | Trackback | Comments(0)
萬斎さん主演で『のぼうの城』映画化!!
来年公開の映画『のぼうの城』で、萬斎さんにとって『陰陽師Ⅱ』以来7年ぶりとなる映画主演を務めるらしい。

和田竜氏による同タイトルのベストセラー小説が原作。戦国末期、わずか500の領民で、石田三成率いる2万の大群に立ち向かった浮き城の城代 成田長親を萬斎さんが演じる。

この主人公は、「のぼう様(でくのぼうの意)」と呼ばれながらも底知れない人望で領民から慕われたという人物。原作も面白そうだけれど、映画を観るまでは読まないでおこうと思う。

共演は佐藤浩市さん、山口智充さん、成宮寛貴さん他。犬童一心監督、樋口真嗣監督のお二人が共同監督を務める。公開は、2011年を予定。クランクインは今年8月。

……となると、この夏から秋にかけては、能舞台に立つ萬斎さんを観る機会はグッと減るってことだよね。少し気をつけて、チェックしてみなくちゃ。

映画『のぼうの城』について、くわしくはこちら→http://pia-eigaseikatsu.jp/news/154526/40220/
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by kiki_002 | 2010-06-23 22:33 | 映像 | Trackback | Comments(0)
雑食な土曜日
土曜日。

まずは、新宿文化センターで、わらび座のミュージカル「アトム」初日を拝見。

あの国民的ヒーロー(?)をどう舞台化するのかと思っていたが、『鉄腕アトム』をひとつの象徴として、ウエストサイドストーリーばりの対立と愛の物語を、歌とダンスで描いたミュージカルとなっていた。

横内謙介氏の力強く温かいストーリーとラッキィ池田氏による楽しくて力強いダンス、甲斐正人氏の親しみやすく美しい楽曲、そして役者陣の安定感のある演技や歌によって、シンプルなテーマが胸に迫る素敵な作品となっていたと思う。

扉座から客演した岩本さんが、平凡な人間の弱さや愚かさを絶妙な軽さで好演。アズリを演じた三重野葵さんと神楽坂役の椿千代さんの静かな中に強さを感じさせる演技と圧倒的な歌唱力が印象に残った。

それから、浅草橋へ移動し、宮西計三氏の個展“「見世物小屋」或は「舞臺裏」”を拝見。

会場に入ると、微かに乾燥したバラの香り。 独特の美意識に裏打ちされた作品たち。 耽美……というにはややグロテスクな、異形の群れ。

そして、その一角に、宮西計三氏と薔薇絵さんのパフォーマンスを素材とした photo unit"エーテル"の舞台作品写真が展示されている。

それは、宮西氏の世界観を写しながら、氏とはまた異質な輝きを感じさせる作品群となっていた。

それから池袋。

友人と落ちあって、シアターグリーンの1階にできたイタリアンバールで軽く腹ごしらえ&おしゃべりをした後、
劇団「柿喰う客」のアンコール凱旋公演『The Heavy User』を、シアターグリーン特設会場「仙行寺」本堂にて。

2月に東京で上演した後、 フランスやイスタンブールでの上演を経ての凱旋公演とのことで、意味や物語を思い切って廃し、俳優の身体性や声をクローズアップした約50分の作品。

日本語のセリフはほとんどないけれど、動きのシャープさや間のよさ、そういうフィジカルなものを通して、『電話』を軸としたコミュニケーションの不全みたいなモノが伝わったりもして。


時間的にはさほどタイトではなかったものの、内容的には、1日に回るにはやや欲張りなラインナップ。

それぞれの世界観があまりにも違い過ぎて、帰りの電車の中で少し可笑しくなってしまった。
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by kiki_002 | 2010-06-20 23:49 | 日々のこと | Trackback | Comments(0)
「まんまこと」
著者:畠中恵
出版社: 文芸春秋(文春文庫)
発売日: 2010/3/10

「しゃばけ」シリーズでお馴染み(?)の畠中恵さんによる江戸を舞台にした短編連作。

神田の町名主(庶民の揉め事の裁定をする)の1人息子 麻之助は、16の頃まではマジメな跡取りだったのに、どういう訳か突然お気楽者の道楽息子へと変わってしまった。

そんな麻之助を中心に、幼なじみの清十郎と吉五郎の3人が、周囲で起こるトラブルに始末をつけていく様子が、軽やかにそしてほろ苦く描かれていく。

清十郎も麻之助同様、町名主の跡取り息子だったり、吉五郎が同心見習いだったりと、事件の謎を解くには打ってつけの立場。しかも、お気楽者とはいえ麻之助は、けっこう人を見る目が確かだし、知恵も回るし、思いやりもある。

しかし、現役バリバリの町名主である親父さんたちの方が1枚も二枚も上手だと思えることも多いし、麻之助がお気楽者に変わることになったある出来事も含め、この世の中にあるやるせない思いやほろ苦さなども描かれ、物語に深みを与えている。

奇妙な事件が起こり、それを麻之助たちが追っていく面白さ。そして、胸に秘めた誰かを思う切ない気持ちや言葉にしてはいけない思い。

「しゃばけ」シリーズに負けないくらい、好きなシリーズになりそうだ。
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by kiki_002 | 2010-06-15 00:30 | | Trackback | Comments(0)
3年経ちました。
気がつけば、ちょうど3年前、2007年の6月11日にこのブログを始めたのだった。

どうして始めようと思ったのか、はっきりした理由はなかったように思う。でも、なぜかその日、昼間のうちから(家に帰ったらブログを始めよう……)と心に決めていた。

仕事を終えて、夜パソコンに向かい、いくつかの手順をすすめると、意外に簡単に始める準備は整った。ただし、その時点でもまだ、何を書くかさえ決まってなかった。

いや、実を言えば今だって、何を書くかなんてことは決まっちゃいないんだった。ま、私の人生の基本は、行き当たりバッタリというヤツですから。

それでも、気がつけばいつのまにか3年。サボることも多いけれど、これまでに1,055の記事を書いてきたのだ。夏休みの絵日記さえ、ちゃんとつけたことがなかったっていうのにね。

きっとそれは、こんな雑文につきあってくださっているアナタのおかげです。どういうご縁でか、ここに来て、この日記を読んでくださっている貴方or貴女。どうかこれからも、よろしくお願いします。
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by kiki_002 | 2010-06-11 23:00 | 日々のこと | Trackback | Comments(2)
「死ねばいいのに」
著者:京極夏彦
出版社: 講談社
発売日: 2010/5/15

……なんていう酷いタイトルだろう。

黒いハードカバーの表紙に金の文字ででかでかと書いてある文字を見て、ついついそんな風に思ってしまう。誰かに向かって実際に口にすることなど、決してできないような、ひどい言葉。そのくせ、心の中ではひそかに呟いたり投げつけたりした覚えのあるかもしれない、そういう言葉。

物語は、ある1人の男が、死んだ女性について尋ねて歩く、その繰り返し。尋ねる相手ごとにひとつの短編になっていて、その相手の視点から物語が語られていく。

死んだ女性の恋人でも同僚でも家族でもなく、ただ『知り合い』だったというその男ケンヤと出会うのは、彼女の上司や隣人、恋人、母親、そして、彼女の死を捜査する刑事。

ケンヤと出会ったそれぞれの登場人物たちが話せば話すほど、見えてくるのはその語り手自身。ふだんは隠されている不満や自負、嫉みや恨み。みんなこんなに生きていくのがツライのかな、と思うほどだ。

そうして、死んだ女の輪郭は、なかなか見えてこない。

どいつもこいつもろくでもないのに、なんとなく身につまされつつ、そして読み終わってみれば、こんな枠組みの話なのに、なぜか後味も悪くなくて。

ミステリーとするなら、早い段階でわかってしまう答えもあるのだけれど、それよりもっと不思議なのは、きっと人の心。そんな風に思いながら、最後まで引き込まれるように読んでしまう、そういう物語。
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by kiki_002 | 2010-06-10 23:54 | | Trackback | Comments(2)
  
だって、好きなんだもん!
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