平成21年8月21日(金)18:30~、シアターコクーンにて。
作/大西信行
演出/いのうえひでのり
出演/
伴蔵:段田安則、お峰:伊藤蘭、
お国:秋山菜津子、源次郎:千葉哲也、
新三郎:瑛太、お露:柴本幸、お米・お六:梅沢昌代、平左衛門:大河内浩、
良石和尚・同心:松澤一之、馬子久蔵:市川しんぺー、
お竹・お梅:西尾まり、お絹:保坂エマ、定吉・下っ引き:粕谷吉洋、
三遊亭円朝・目明し・百姓:森本健介
段田さんの伴蔵と元キャンディーズ(!)の伊藤蘭さんのお峰と聞いただけで、「観に行かなきゃ!」っていう気になるし、他にも秋山さんのお国や、これが初舞台だという瑛太さんの新三郎など、面白そうなキャストがそろっている。しかも、演出が「劇団☆新感線」のいのうえひでのりさんだということだし。
物語の内容については、昨年9月に花組芝居の「怪談 牡丹燈籠」を観ていたので、予習は充分。……というより、花組バージョンと比べてみるのも楽しみだし。
などと、観る気満々だった割には、チケットゲットに出遅れて、すでに売り切れ。
じゃあいっそ当日券で、とシアターコクーンに向かってみた。到着したときにはすでに10数人が当日券の発売を待って並んでいる。係の方の説明を聞くと、どうやら普通の座席はほんの2~3枚、あとは立ち見ということらしい。
2時間50分を立ち見って……ちょっと自信ない(汗)。でも、とりあえず観られることは観られる。ここで止めて他の芝居を観に行く、とか、いっそ帰る、っていう選択肢もあったけれど、結局は観ることにしてしまった。
中2階バルコニー席の後ろ。券を買う時点で「見切れる」と言われたけれど、まあそれほど見づらいってこともない。
で、肝心の舞台の方は。
いや~~、女ってコワイね、っていうのがまずは第一印象。お峰といい、お国といい、いや純情可憐なお露でさえ、死してなお、恋しい男のところへと通って、心変わりされるくらいならいっそ取り殺してしまおうという、その一途な恋心というか執念というか。
でもねぇ、女の強さも恐ろしさも、恋ゆえのものなんだよねぇ。男が命惜しさや金や名誉に踊らされて、右往左往するのに比べて、女はいつも愛しい男を自分のそばに置くためだけに、ずいぶんと酷いことも大胆なこともできてしまうんだなぁ……。もちろんこれは、一般論じゃなくこの芝居の中の話ね。
「牡丹燈籠」といえば、新三郎に恋焦がれて死んだお露とその乳母のお米が下駄をカランコロンと鳴らしながら、夜な夜な新三郎のもとへ訪れる……っていう有名な怪談だけれど。
花組芝居バージョンでは、お露と新三郎のパートと孝助仇討ちのパートを交互に語るという圓朝本来の噺に添った展開だった。今回の芝居は大西信行氏の脚本で、孝助の部分はキレイになくなっており、お露と新三郎、それに絡んでくる伴蔵とお峰、そして、お露の父を手にかけたお国と源次郎を中心に物語が進んで行く。
瑛太さんの演じる新三郎は、二枚目役にピッタリの爽やかな声が印象的。柴本幸さんのお露とのカップルは、なんとも初々しい印象だった。
その若い2人よりも、お互いに酸いも甘いも噛み分けた、人生いろいろな感じの伴蔵お峰夫婦のやり取りをタップリと観せて、人の心の移ろいや弱さを感じさせる。前段の幽霊と取引をするくだりや、後半のお峰の焼きもちからお峰殺しにいたるまで、伴蔵がどうしてああいうことをしてしまうようになったのか、説得力を持って描いている。
根っからの悪党ではない、もしかすると自分も同じことをしてしまうかもしれない、そういう弱い人間としての伴蔵。
一方のお峰は、反対にこれでもかというくらい強い女だ。生活の重さを身に染みてわかっているという強さで、幽霊に対峙してうろたえる亭主を叱咤し、あるいは金が出来て浮気を始めた亭主をピシリと追い詰める。
お国もそうだ。のんびりした色男の尻を叩いて主を殺させようとしたり、ケガをして弱気になる男を養い励ます。
この話で怖いのは、幽霊ではない。この世で怖いのは、人の心。女の情念。とはいえ、ちゃんと怪談の風情もあって、夏の夜にふさわしい芝居だったかもしれない。
作/大西信行
演出/いのうえひでのり
出演/
伴蔵:段田安則、お峰:伊藤蘭、
お国:秋山菜津子、源次郎:千葉哲也、
新三郎:瑛太、お露:柴本幸、お米・お六:梅沢昌代、平左衛門:大河内浩、
良石和尚・同心:松澤一之、馬子久蔵:市川しんぺー、
お竹・お梅:西尾まり、お絹:保坂エマ、定吉・下っ引き:粕谷吉洋、
三遊亭円朝・目明し・百姓:森本健介
段田さんの伴蔵と元キャンディーズ(!)の伊藤蘭さんのお峰と聞いただけで、「観に行かなきゃ!」っていう気になるし、他にも秋山さんのお国や、これが初舞台だという瑛太さんの新三郎など、面白そうなキャストがそろっている。しかも、演出が「劇団☆新感線」のいのうえひでのりさんだということだし。
物語の内容については、昨年9月に花組芝居の「怪談 牡丹燈籠」を観ていたので、予習は充分。……というより、花組バージョンと比べてみるのも楽しみだし。
などと、観る気満々だった割には、チケットゲットに出遅れて、すでに売り切れ。
じゃあいっそ当日券で、とシアターコクーンに向かってみた。到着したときにはすでに10数人が当日券の発売を待って並んでいる。係の方の説明を聞くと、どうやら普通の座席はほんの2~3枚、あとは立ち見ということらしい。
2時間50分を立ち見って……ちょっと自信ない(汗)。でも、とりあえず観られることは観られる。ここで止めて他の芝居を観に行く、とか、いっそ帰る、っていう選択肢もあったけれど、結局は観ることにしてしまった。
中2階バルコニー席の後ろ。券を買う時点で「見切れる」と言われたけれど、まあそれほど見づらいってこともない。
で、肝心の舞台の方は。
いや~~、女ってコワイね、っていうのがまずは第一印象。お峰といい、お国といい、いや純情可憐なお露でさえ、死してなお、恋しい男のところへと通って、心変わりされるくらいならいっそ取り殺してしまおうという、その一途な恋心というか執念というか。
でもねぇ、女の強さも恐ろしさも、恋ゆえのものなんだよねぇ。男が命惜しさや金や名誉に踊らされて、右往左往するのに比べて、女はいつも愛しい男を自分のそばに置くためだけに、ずいぶんと酷いことも大胆なこともできてしまうんだなぁ……。もちろんこれは、一般論じゃなくこの芝居の中の話ね。
「牡丹燈籠」といえば、新三郎に恋焦がれて死んだお露とその乳母のお米が下駄をカランコロンと鳴らしながら、夜な夜な新三郎のもとへ訪れる……っていう有名な怪談だけれど。
花組芝居バージョンでは、お露と新三郎のパートと孝助仇討ちのパートを交互に語るという圓朝本来の噺に添った展開だった。今回の芝居は大西信行氏の脚本で、孝助の部分はキレイになくなっており、お露と新三郎、それに絡んでくる伴蔵とお峰、そして、お露の父を手にかけたお国と源次郎を中心に物語が進んで行く。
瑛太さんの演じる新三郎は、二枚目役にピッタリの爽やかな声が印象的。柴本幸さんのお露とのカップルは、なんとも初々しい印象だった。
その若い2人よりも、お互いに酸いも甘いも噛み分けた、人生いろいろな感じの伴蔵お峰夫婦のやり取りをタップリと観せて、人の心の移ろいや弱さを感じさせる。前段の幽霊と取引をするくだりや、後半のお峰の焼きもちからお峰殺しにいたるまで、伴蔵がどうしてああいうことをしてしまうようになったのか、説得力を持って描いている。
根っからの悪党ではない、もしかすると自分も同じことをしてしまうかもしれない、そういう弱い人間としての伴蔵。
一方のお峰は、反対にこれでもかというくらい強い女だ。生活の重さを身に染みてわかっているという強さで、幽霊に対峙してうろたえる亭主を叱咤し、あるいは金が出来て浮気を始めた亭主をピシリと追い詰める。
お国もそうだ。のんびりした色男の尻を叩いて主を殺させようとしたり、ケガをして弱気になる男を養い励ます。
この話で怖いのは、幽霊ではない。この世で怖いのは、人の心。女の情念。とはいえ、ちゃんと怪談の風情もあって、夏の夜にふさわしい芝居だったかもしれない。
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by kiki_002
| 2009-08-21 23:57
| 舞台
|
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Comments(1)
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女は怖いって思わせる舞台だったな。うちの奥方様より
有名人も結構観に来てるね、皆、愛想良く握手とか応じてたね
でもさ蒼井優さんだけはさ無視、無視でさ感じ悪いのなんのって
イメージと性格と異なるよって聞いていただけの事はあるね
それが一番怖かった。お露さんよりね。
有名人も結構観に来てるね、皆、愛想良く握手とか応じてたね
でもさ蒼井優さんだけはさ無視、無視でさ感じ悪いのなんのって
イメージと性格と異なるよって聞いていただけの事はあるね
それが一番怖かった。お露さんよりね。