project☆&p2「汝、知り初めし逢魔が刻に・・・」
2010年 03月 07日
平成22年3月6日(土)18:00~、笹塚ファクトリーにて。
「汝、知り初めし逢魔が刻に・・・」
作/松田環(劇団しゅうくりー夢)
演出/田中 精
出演/
田中 精(劇団ソコソコ)
おぐらとしひろ(JAE)
佐久間紅美(ミディアルタ)
那須野 恵(北区つかこうへい劇団)
岩田栄慶(キャスタッフ)
松元環季
山本 卓(エレキ隊/Afro13)
森澤碧音(DanceCompanyMKMDC)
松浦俊秀(ジョイント・アクションクラブ)
高間慎一朗(カプセル兵団)
広田さくら
中野裕理(DMF)
牛水里美(黒色綺譚カナリア派)
湯田昌次(湯田商店)
谷口洋行
鈴木充範(TEAM我武者羅)
篠原一樹(ミディアルタ)
前野 強
佐藤信也
中 博史(ぷろだくしょんバオバブ)
さてこの作品。しゅうくりー夢の松田環さんの脚本……というだけでなく、しゅうくりー夢でちょうど10年前に上演した作品の再演。しかも、個人的には初めてしゅうくりー夢と出会った思い入れのある芝居なので、いったいどんな風に仕上がっているのか、期待と不安を抱えつつ、劇場へ向かった。
時は平安時代、ひとりの美しい娘が、森で出会った鬼とそれと知らず恋に落ちるところから物語は始まる。娘は殿様に見初められて恋する相手と引き裂かれ、城でその鬼の子を生むことになる。鬼の子、夜叉丸と正妻の子で嫡男の景時がともに成長したとき、この二人の運命が大きく交差していく……。
劇場に入って舞台装置を観た瞬間から、微かな既視感を感じた。芝居が始まると、よりいっそうそれが強くなっていく。ああ、私はこれを知っている、懐かしい景色、見たことのある人々、覚えのある出来事……。
いやもちろん、知っている。初演を観たのはすでに10年も前だけれど、その後もビデオを観たり台本を読み返したり、何度も繰り返し訪れた馴染み深い場所だ。
その上、この芝居の設定を元に作られた「大正探偵怪奇譚」のシリーズは、近年のしゅうくりー夢を代表する作品群と言っても過言ではない名作。夜叉丸という名や秋葉の庄という場所に、この劇団のファンなら親しい気持ちを持たないはずはない。
けれどそれを差し引いても、登場人物の解釈も場面の組み立ても、明らかに初演を意識……というより、リスペクトしたものとなっている。あのセリフの抑揚、あの叫び、あの動き、あの衣装のイメージ、ひとつひとつが初演の場面を思い起こさせる。
実は、このプロジェクトを立ち上げた田中精さんと佐久間紅美さんは、この作品の初演に出演されていたのだ。それをいま、こうして上演しようとしたことからも、この作品への思い入れがうかがえるだろう。
他のキャストにも、初演のビデオを観てもらったり、それを意識した演出をしているのかもしれない。
もちろん、今回演じている役者さんのそれぞれの魅力も出ているけれど、まずは初演時の世界観を継承しようという気持ちを感じさせる舞台となっている。
魅力的だったのは、里の衆を演じた方々だ。気丈で美しい萱乃、無骨で意地っ張りな藤太、人のいい陣八、若い一途さを感じさせる宗介、優しいじっちゃん、男勝りの樹、そして特に印象的なのが少女 佐那を演じた松元環季さんの無邪気な優しさだった。
城の方では、景時の弟 実之を演じた山本卓さんがコンプレックスを抱えた若者を好演。上月の豪快さや京極の思い詰めた様子、榊の律儀さなどもイメージに合っていてよかった。
クライマックスでは、物語のせつなさに会場から嗚咽をこらえる声がもれていた。
2時間半の長さを感じさせないドラマチックな仕上がりの平安伝奇絵巻。鬼の棲む森に聴こえる孤独で無邪気な声に、さまざまな感慨を覚えながらラストシーンを迎えた。
恋もある。派手な立ち回りもある。罠や謀略やどんでん返しもある。でも、なによりも印象に残るのは、ひとがひとをいとしく思う気持ちのせつなさ。そういう初演のエッセンスを大切にした、見応えのある芝居だった。
「汝、知り初めし逢魔が刻に・・・」
作/松田環(劇団しゅうくりー夢)
演出/田中 精
出演/
田中 精(劇団ソコソコ)
おぐらとしひろ(JAE)
佐久間紅美(ミディアルタ)
那須野 恵(北区つかこうへい劇団)
岩田栄慶(キャスタッフ)
松元環季
山本 卓(エレキ隊/Afro13)
森澤碧音(DanceCompanyMKMDC)
松浦俊秀(ジョイント・アクションクラブ)
高間慎一朗(カプセル兵団)
広田さくら
中野裕理(DMF)
牛水里美(黒色綺譚カナリア派)
湯田昌次(湯田商店)
谷口洋行
鈴木充範(TEAM我武者羅)
篠原一樹(ミディアルタ)
前野 強
佐藤信也
中 博史(ぷろだくしょんバオバブ)
さてこの作品。しゅうくりー夢の松田環さんの脚本……というだけでなく、しゅうくりー夢でちょうど10年前に上演した作品の再演。しかも、個人的には初めてしゅうくりー夢と出会った思い入れのある芝居なので、いったいどんな風に仕上がっているのか、期待と不安を抱えつつ、劇場へ向かった。
時は平安時代、ひとりの美しい娘が、森で出会った鬼とそれと知らず恋に落ちるところから物語は始まる。娘は殿様に見初められて恋する相手と引き裂かれ、城でその鬼の子を生むことになる。鬼の子、夜叉丸と正妻の子で嫡男の景時がともに成長したとき、この二人の運命が大きく交差していく……。
劇場に入って舞台装置を観た瞬間から、微かな既視感を感じた。芝居が始まると、よりいっそうそれが強くなっていく。ああ、私はこれを知っている、懐かしい景色、見たことのある人々、覚えのある出来事……。
いやもちろん、知っている。初演を観たのはすでに10年も前だけれど、その後もビデオを観たり台本を読み返したり、何度も繰り返し訪れた馴染み深い場所だ。
その上、この芝居の設定を元に作られた「大正探偵怪奇譚」のシリーズは、近年のしゅうくりー夢を代表する作品群と言っても過言ではない名作。夜叉丸という名や秋葉の庄という場所に、この劇団のファンなら親しい気持ちを持たないはずはない。
けれどそれを差し引いても、登場人物の解釈も場面の組み立ても、明らかに初演を意識……というより、リスペクトしたものとなっている。あのセリフの抑揚、あの叫び、あの動き、あの衣装のイメージ、ひとつひとつが初演の場面を思い起こさせる。
実は、このプロジェクトを立ち上げた田中精さんと佐久間紅美さんは、この作品の初演に出演されていたのだ。それをいま、こうして上演しようとしたことからも、この作品への思い入れがうかがえるだろう。
他のキャストにも、初演のビデオを観てもらったり、それを意識した演出をしているのかもしれない。
もちろん、今回演じている役者さんのそれぞれの魅力も出ているけれど、まずは初演時の世界観を継承しようという気持ちを感じさせる舞台となっている。
魅力的だったのは、里の衆を演じた方々だ。気丈で美しい萱乃、無骨で意地っ張りな藤太、人のいい陣八、若い一途さを感じさせる宗介、優しいじっちゃん、男勝りの樹、そして特に印象的なのが少女 佐那を演じた松元環季さんの無邪気な優しさだった。
城の方では、景時の弟 実之を演じた山本卓さんがコンプレックスを抱えた若者を好演。上月の豪快さや京極の思い詰めた様子、榊の律儀さなどもイメージに合っていてよかった。
クライマックスでは、物語のせつなさに会場から嗚咽をこらえる声がもれていた。
2時間半の長さを感じさせないドラマチックな仕上がりの平安伝奇絵巻。鬼の棲む森に聴こえる孤独で無邪気な声に、さまざまな感慨を覚えながらラストシーンを迎えた。
恋もある。派手な立ち回りもある。罠や謀略やどんでん返しもある。でも、なによりも印象に残るのは、ひとがひとをいとしく思う気持ちのせつなさ。そういう初演のエッセンスを大切にした、見応えのある芝居だった。
by kiki_002
| 2010-03-07 12:00
| 舞台