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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

扉座第45回公演 扉座人情噺『神崎与五郎 東下り』

平成22年5月22日(土)19:00~、座・高円寺にて。

作・演出/横内謙介

出演/
高塚旭(大衆演劇の役者。『おやまルンバ』で大ブレイク中):市川笑也(客演)
宇佐見(高塚の先輩役者だったが、いまは舞台と縁のない酔っ払い):六角精児
亀吉(高塚の劇団の役者。高塚や宇佐見より年上ながら、人が良くて子分気質):岡森諦
こまめ(高塚と同じ劇団のベテラン女優):中原三千代

由希子(居酒屋一力の女将の娘。入院中の女将に代わって店を切り盛り):高橋麻理
マサ(一力の常連。電気工事会社勤務。泣き上戸):犬飼淳治、 
山本(一力の常連。小さい鉄工所を経営。笑い上戸):鈴木利典、
姫子(一力の常連。家具屋の跡取り):鈴木里沙、
昇平(宇佐見のケンカ相手):新原武、
ネネ(昇平の彼女):江原由夏

アンサンブル:上土井敦、串間保彦、江花実里、吉田有希

赤穂の浪人、神崎与五郎は、大石内蔵助の内命を帯びて、京から江戸へ向かった。
やがてさしかかる箱根の山の、とある茶屋で休んでいるところに、
峠の馬方・丑五郎というならず者に言いがかりをつけられる。
しかし討ち入りという大事を前に、与五郎は我慢を重ねて恥辱を受けたまま去る。
後日、それが義士の一人であったと知った丑五郎は、深い後悔に泣き伏したのだった……。

……という講談や浪曲でお馴染みの忠臣蔵のエピソードを
“笑いと涙”満載で扉座新作人情芝居に仕立てておおくりいたします。
(公式HPより)


そんな訳で扉座と澤潟屋のコラボ。これはねぇ、もう観なくちゃ!って気になるでしょ?会場の座・高円寺もけっこう好き。でも、ここで笑也さんを観るとは思わなかったなぁ。

ここは、居酒屋一力。どうやら昨夜、常連の1人が店でケンカして、店内をグチャグチャにしちゃったらしい。それを徹夜で片付けた女将代理の由希子は機嫌が悪い。

集まり始めた常連も遠慮気味。そこへ昨夜暴れた張本人である宇佐見がやってくる。どうやら昨日のことはまったく覚えていないらしい。ますます機嫌が悪くなる由希子。

そこへ宇佐見を訪ねてきたのは、『おやまルンバ』で大ブレイク中した大衆演劇界のスーパースター高塚旭。自分の初座長公演に、かつての当たり役だった「神崎与五郎 東下り」の馬子役で出演して欲しいと、宇佐見に頼みに来たのだった。

かつて人気役者だった宇佐見は、女性関係のトラブルやギャンブルによる借金など数々の問題を起こして劇団を去り、いまはタクシーの運転手をして暮らしていた。しかし、舞台への思いは経ち難く、今回の高塚の申し出を聞いて天にも昇る気持ちになるが……。

「神崎与五郎 東下り」の稽古風景や一力でのやり取りなど、ベテランと中堅、若手が気持ちのいいチームワークで扉座らしい芝居を進めていく。

特に、笑也さんのチャーミングさはなんていっていいか!キリリとした女剣士や妖しいマクベス夫人など、これまで拝見した役柄とはまったく違って、今どきのオシャレな男性で、今は売れっ子だけれど、下積みの長さを感じさせる誠実さと不器用さを感じさせる役者 高塚旭を魅力的に演じている。

もうねぇ、なんていうか、お茶目な感じが満載で、楽しそうなんだよ~~~。きっとホントは苦労なさったことも多いだろうけど、でも!やっぱり楽しそうに見えるの。これはねぇ、いいもの見せてもらった~~と思います。

一力の常連を演じる扉座の中堅チーム。泣き上戸のマサと笑い上戸の社長、そこに突っ込みをいれる姫子の3人のコンビネーションがバッチリで、観ていて安心感があった。

宇佐見のケンカ相手 昇平と彼女のネネ。コミカルなんだけどけっこうキーになる役で、一力メンバーとの距離感の変化とか、宇佐見とのやり取りとか見せ場も多かった。

女将代理の由希子を演じた高橋麻理さん。キレイだし、スタイルいいし、いろいろと複雑な思いをややぶっきらぼうに、そして繊細に演じていて素敵だった。

ベテラン勢はもう言うまでもなくて、中原さんが言いにくいことを言う様子や、日頃親分肌に見える岡森さんの子分キャラなど、観ていて引き込まれた。

主役である六角精児さん。一力メンバーや昇平たちと、笑也さんと、中原さんと、岡森さんと、それぞれどのやり取りも味わい深かったが、特に高橋麻理さんとの会話が印象に残る。

劇中劇で演じられる「神崎与五郎 東下り」の見せ方も楽しくて、稽古場で演じられる前半はもちろん、ラスト近くに意外な形で演じられる後半部分は、不思議な充足感があった。

陳腐な言い方になってしまうけれど、笑いあり涙あり、思わずホロリとさせらる人情噺。観終わった後に残る少しほろ苦い温かさが、この劇団らしさのようにも感じられた。
by kiki_002 | 2010-05-30 10:22 | 舞台