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ドキドキさせてよ

だって、好きなんだもん!


by kiki

「魔王」

著者:伊坂幸太郎
出版社: 講談社(講談社文庫)
発売日:2008/9/12

不思議な力を持ってしまった平凡な男を主人公にした「魔王」と、その弟夫婦を主役にした続編「呼吸」の2つの作品が収めたれたこの本。読み終えて感じたのは、「これは、壮大な物語の序章なのではないか?」ということ。

不思議な力……主人公が持ってしまったのは、他人に自分の思った言葉を言わせることができる奇妙な力。それから、多くの人の関心を集めている1人の政治家と、その政治家の言動に不安を感じる主人公。「考えろ、考えろ」彼はことあるごとに、そう自分に言い聞かせる。

私たちは考えているか?流されてはいないか?考えずにただ流されてしまったとき、この国はどこへ向かうのか。

そして、あっけない幕切れ。

続編では、弟に別の不思議な力が現れ始める。最初はただ、ジャンケンが強い……というだけのことだった。しかしその力について、気づき始めた弟は、ある目的のために力を使おうとする。

何を変えようとしているのか、どこを目指すのか。はっきりとは語られないまま、この物語は終わってしまう。だからこそ、読者はいろいろと考えさせられるのだろう。

そうそう、以前読んだ「死神の精度」の登場人物が、この作品にも登場して、主人公の運命を予想させていた。こういう遊びも楽しい。

ミステリーでもSFでもない、やや奇妙な味わいの物語。一読の価値はあると思う。
by kiki_002 | 2008-10-17 23:56 |